ゴルフルール・マナー

ジョーダン・スピースに学ぶアンプレアブルの意味と活用方法/適応されるケースとされないケース

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ゴルフのルールには2面性があります。

ひとつはルールを破ったり守らない場合に適応される「罰=ペナルティ」という一面です。社会の法律的と同等という見方ですね。

一方では、ルールで定められた池やOBなどの処置とかアンプレアブル宣言という種類の規則は、罰打はつくものの根本的には「救済」です。

救済ということはペナルティを受けることで、スコアが有利になるレスキューであるという解釈が正解です。

 

アンプレアブルのルールを熟知している人とそうでない方は大きな差が現れます。

今回はプロゴルファーでも処置を誤ってしまうほど奥の深い「アンプレアブル」の知識とルールについて、過去にあった事例も交えながら解説していきます。

 

そして、今や伝説ともなった2017年の全英オープンでジョーダン・スピースが駆使したアンプレアブルの対処についても紹介していきます。

 

アンプレアブルを正しく理解し、使い分けることがベスト

 

プロゴルファーはルールを知り尽くしている、ということはなく実際に誤用の例は数限りなくあります。

ましてアマチュアなら、若干ややこしいアンプレアブルのルールを誤解しているプレーヤーも珍しくありません。

 

 

アンプレアブルが適応されるケースとされないケース

それではまず、ゴルフを始めたばかりの方向けにわかりやすくアンプレアブルの基本から解説します。

 

「アンプレアブル(Unplayable)とは言葉の通り、ボールの置かれた状況から判断して、プレー続行はできません、お手上げですという意味です。

「Un」「Play」ですね。

 

ムチャをすればショットができる場合にも、アンプレアブルを詳しく知っていれば合法的に使えるルールだと理解してください。

ただし、ウォーターハザードなどに入ったときはウォーターハザードのルールがあるので、プレー続行できないとしても適用はされません。

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また逆に深いラフその他の事態で、ボールが確認されて十分打てるとしてもアンプレアブルを使うほうが有利だという判断があれば、ルール上の救済の選択肢になります。

 

なお、ボールを紛失したときにはこのアンプレアブルは使用できず、あくまでも自分のボールを現認したときに限られます。

 

アンプレアブルの基本的処置は3通り

 

深いブッシュや植え込み、大きな石(動かせない障害物)に挟まれたなどの理由で、物理的にボールが打てない時はアンプレアブルの処置をします。

 

このルールを使うときは暫定球のルールと同様、同伴競技者に「宣言」しないと履行されません。

もし宣言しないでボールをピックアップすると1打罰がつきます。

 

ゴルフ規則28、アンプレヤブルの球 (Ball Unplayable)が定める救済には以下の3通り(2017年現在)があります。

①当該のボールから2クラブレングス以内でホールに近づかないところにドロップ。

ホールカップとボールの位置を直線で結んだ後方線上にドロップ。
※この場合のバックする距離に制限はありません。後述するスピースの対応に、その”賢すぎる”対処が登場します。

③当該のボールを打った1打前の地点に戻って打ち直し
※その位置が遠く、そこに戻っても定かではない時は、できるだけ正確にという条項があります。
※前打がティーショットの場合は、打ち直しのときもティアップできます。

 

そして、いずれの場合も以下の規則があります。

①いずれにしろ1打の罰があること。

②ボールをピックアップしたりクラブレングスを計測するときは、クラブの種類に制限はないもののヘッドカバーがついていたら違反です。

③1クラブレングスとは、クラブのグリップとヘッドのヒールまでのことを言います。

④2度ドロップしてもそのレングスから外れたりホールに近づいたときは3度目のドロップはできません。2度目のドロップで落ちた時の地面の1点に、手でボールをそっとリプレースします。

⑤ドロップした箇所がさらにカート道路にかかるようなときは、今度はその救済を続けて受けることになりますが、救済は必ずしも受けなければならないという規則はありません。

⑥クラブで計測するときは目印(ボールマーカーやティーペグ)を置きますが、打つときには除去すべきです。それがスタンスをとるとき目印として利用されると誤解されかねません。

 

上記規則通りに正しく処置しないと2打の罰がつきます。

また、2019年のゴルフルール大改正で様々な変更が予定されていますので、詳しくはこちらを参照してみてください。

ゴルフルールが100年に一度の大改定!変更の目的は「時短・競技人口増」

これまでゴルフルールは旧態依然としていて、現代にマッチしていないものも多数存在していました。
しかし、2019年より「ゴルフルール大改革」が始まります。目的は「スピーディーなゴルフ」と「シンプル化による競技人口の増加」です。
果たしてどんなルール変更がなされるのか、まとめてみましたのでご覧ください。

 

特殊なケースのアンプレアブル

 

アマチュアどころかプロでさえ間違うケースがあります。

なかなか出くわすことがないかもしれませんが、アタマの引き出しにしまっておくと、いざというとき役に立ちます。

 

①バンカーでのアンプレアブル

プロゴルファーが誤った処置を犯し、そのままスコア提出してしまって失格になったことがありました。

 

ある女子プロはバンカーの土手に刺さってしまったボールを見て打てないと判断し、アンプレアブルを宣言したまでは問題ありませんでした。

ところが彼女は前述のルールを勘違いしていたため、ボールとピンを結んだ線上にず~っと後退し、なんとラフまでバックしてからアプローチショットをしました。

バンカーはハザードなので、いかにアンプレアブルといえど後方に下がるときはバンカーの外へは出られないという制限を知らなかったのですね。

 

②木に引っかかったボールをアンプレアブルする

ボールは間違いなく自分のものだと確認されないかぎり、ロストボール扱いになります。

この時は前打に戻って2打を加えた計算で打ち直します。

 

ボールを木によじ登って確認することができれば、アンプレアブル宣言で1打の罰がつくものの、そのボールの直下からも打てますし前打に戻ることも自由です。

ボールの確認はプレーヤーでもキャディでもギャラリーでもOKです。

 

かつて、物を投げてボールを落とした事件もありましたが、これも2打の罰になります。

マスターズで勝ったセルヒオ・ガルシアは若いとき、木によじ登ってそこからショットしたことがありました。

 

 

結果はダブルボギーでしたが、片手でしかも背面打ちという特殊なショットでフェアウェイへリカバリーを成功させたガルシアの姿に大歓声が沸き上がりました。

 

全英を制したスピースのクレバーなアンプレアブル

 

時は2017年7月、この年の男子ゴルフのメジャー第3戦の全英オープンは23日に最終日が行われました。

コースはロイヤルバークデールゴルフクラブ、全長7,156ヤードでパー70。

 

メジャーですからタフなセッティングは当たり前とはいうものの、13番ホール(503ヤード=パー4)でスピースのボールはとんでもないところに飛んで行きました。

最終日は3打のリードがあったスピースでしたがそれもどこかに消え去り、前のホールでマット・クーチャーに並ばれた直後でした。

スピースはドライバーの直後、頭を抱え込んでしまいました。

 

おもえばスピースには似たような記憶がありました。

数年前のマスターズの最終日12番で、4打のリードがありながら2度の池ポチャで優勝を逃がした「トラウマ」が、抱えた頭の中に蘇っていたのかもしれません。

ギャラリー席をはるかに飛び越えた場所は深いブッシュ、左足上がりのつま先上がり、とにかくボールを打つことができそうもなく、強引に打てば傷口を広げるだけでした。

まさに絶体絶命、テレビの解説者は先ほどのマスターズを引き合いに出していました。

 

誰も考えなかったアンプレアブルのその後

スピースはボールに近づき、しばし小高い丘の上で自分のボールを見つめていました。

信頼するキャディのマイク・グレラーがお手上げポーズするのを見て、スピースはアンプレアブルを宣言しました。

そこまでは大方の予測通りでしたが、違ったのはそこから後のことでした。

 

スピースの行動は意外でした。

スピースが向かったのはボールから100ヤード後方にある隣のプラクティスレンジ(練習場)でした。

 

スピースは競技委員に「ここはOBゾーンですか?」と訪ねました。

答えはノーだったので次打はここ以外ないと判断しました。

 

ボールは各クラブメーカーのトラックが駐車している場所を避けた位置にドロップされました。

そこはたしかにクラブを振るには十分なスペースがあり、周りはフラットでライもバッチリ、グリーンまで260ヤードです。

 

ボールがブッシュに飛び込んでから29分後、スピースの後世に語り継がれるショットが放たれ、なんとグリーン手前のバンカー近くまで運びました。

 

スピースはここをボギーでしのぎ、次の14番でバーディとしてトップに並び、続く15番ではイーグルを奪って決着をつけました。

結果を見ればこの23歳の若者がこの年の全英オープンを、ワイヤーアンドワイヤー(4日間首位にいたままの優勝)をやってのけたのです。

 

世界中のメディアがスピースが優勝した要因を「13番のアンプレアブルのクレバーな処置」として挙げたのは誰もが納得する報道でした。

 

アンプレアブルについてのまとめ

 

スピースの歴史に残る劇的なアンプレアブルの処置は、当然ルールを知り尽くしていたことと、彼自身が語っているように自分はよく曲げてしまうから、何度もアンプレアブルを経験したので浮かんだアイディアだったということに尽きます。

 

こうしてみても、ルールは知らないと間違って余計なスコアを叩くだけではなく、賢い応用で大事な1打~2打という節約ができることが解ります。

冒頭でもお伝えしましたが、ゴルフルールには「罰と救済」の2面性があります。

初心者の皆さんも、今回ご紹介したスピースの処置をご記憶いただき、「ルールはなんのためにあるか」を考えていただければ、さらにゴルフが楽しくなることでしょう。

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