やはりゴルフが好きなら、多少大雑把でも「起源と歴史」くらいは知っておきたいものですね。
多くのゴルフファンの方々は、ゴルフの起源というと「スコットランド」だと考えています。
ところが最近はもっと説得力のある起源説が登場、そちらは後半に登場します。
起源説と歴史の前編では、ローマ帝国時代にあった「パガニカ」に遡り、「捶丸」(チュイワンまたはスイガン)を基にした中国起源説はにわかに信用できないものの、興味深い資料が揃っていますというお話でした。
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2000年にわたる壮大なゴルフの歴史と起源に迫る(前編)
ゴルフの起源はスコットランド?いえいえ諸説あり、中には中国が起源という説もあります。
今回は「ゴルフはどのようにして誕生したのか」、そしてどのようにして現在の競技へ進化して行ったのか、2000年の歴史を追ってみます。
ゴルフのメジャー大会の中で、最も歴史と権威があるのは全英オープンです。
ゴルフファンの方ならご存じでしょうが、正式名称は"The Open Championship"であって、全英やゴルフという言葉は使われていませんね。
当時から”ゴルフ以外”のスポーツの国際的選手権試合が全くなかったから“ゴルフ”と称する必要がなかったのです。
これこそスポーツ分野での、ゴルフの歴史を物語るものかもしれません。
さて、後編はますます興味津々の起源説に迫ります。
イングランドがゴルフの発祥地なのか?
すべてのものに起源あり!とはいうものの、「ゴルフ」とはなんぞや?という答えが見つからないと、ゴルフはいつからかが特定できないことは前編でもお話しました。
ではずっと昔に遡りましょう。
これぞゴルフ発祥の証という場所があります。
その根拠となるのが、ロンドンから約190km南西にあるグロスター大聖堂にあります。
この寺院のステンドグラスに、ある一人の人(写真=男性に見える)がクラブ(に見える)で、確かにボールに向かってスイングしているかのような絵柄が残っているのです。
確かに足腰の使い方から察しても、今のゴルフに見えなくもありません。
この寺院は1350年に建てられていて、その当時からステンドグラスにあることから、スコットランドではなくイングランドがゴルフの発祥地だという根強い意見があり、歴史研究者の間で高い信用度があります。
「ゴルフ」という文字が最初に登場したのはいつ?
ゴルフの歴史を振り返るとき、「ゴルフ」の文言が現れた地球上の最も古い文献は、一体いつでどれなんだろうと思いませんか?
それは1457年、現存するゴルフに関する最古の文献はスコットランド国王ジェームズ2世が発令した「ゴルフ禁止令」です。
これより古いものを見つけた方は億万長者になれるかもしれません。
今は一国扱いになりましたが、当時スコットランドとイングランドはまったく別な国でした。
それも犬猿の仲でいつ戦争になってもおかしくない状況下でした。
このころ(1424~1456)にスコットランドではゴルフが大流行、国中に広がり庶民も夢中だったようです。
自然に出来上がった良いコースが、あっちにもこっちにもあったという土地柄もありました。
日本はそのころ室町時代、足利尊氏が武家政権を作ったころです。
ゴルフ禁止令はその後どうなったのか?
困ったのは兵士たちがゴルフの虜(とりこ)となってしまい、日々の軍事訓練をサボるのが当たり前になっていました。
国王は戦力低下を恐れ、演習に集中させるため「ゴルフ並びにフットボール(サッカー)禁止令」を出しました。
これが「GOLF」の文字として最古のものです。
2代後のジェームズ4世は追認したものの、自分自身がゴルフにハマってしまい、1502年に禁止令を解除しました。
ゴルフの魅力には王様も勝てなかったわけです。。
ジェームズ4世は、パースという町の弓の製造業者からゴルフ用具を調達したという記録も残っています。
これが、ゴルフ用具の購入に関する最古の記述でもあります。
ゴルフのルールはいつからできたの?
どこからがゴルフか?人によってさまざまな見方があります。
クラブとボールとホールの人工的な3点セットがないとゴルフとは言わないという条件付きまであります。
ひとつ耳の傾けたい意見に「ルール」があって初めてゴルフという方がいます。
そこで世界最古のゴルフルールはいつからなのかを辿ってみました。
先ほどのゴルフ禁止令から287年後、はじめてゴルフルールが成文化されました。
つまりそれまでのルールは、その都度お互いの合意だけでの決め事だったんですね。
当時は競技会も少なくホールマッチがほとんどで、勝った負けたをシャツ(ダブルカラー)の袖に鉛筆でメモっておけば用が済みました。
ルールが決まったことを改めて考えてみると、この瞬間にゴルフがスポーツになった感があります。
1744年にスコットランドのエジンバラ市参事会(現在のミュアフィールドの前身)が、アマチュアゴルファーの大会を開催して銀製クラブを寄贈し、当時はほぼだれも経験がないパブリックな競技会のために共通のルールが必要だったのです。
R&Aが初のゴルフルールを定める10年前のことでした。
最近、にわかにクローズアップされてきたゴルフの起源説
さて、つらつらと興味深いゴルフの歴史と起源説をお話してきましたね。
最後に、もっとも有力な起源説をご紹介しておきます。
ここまで書いてきたように現在のゴルフに似た「遊び」は世界中にあり、それらが複合した形でゴルフになったというのは想像できる話です。
それもゴルフの起源で集中するのは、必ず14世紀~15世紀あたりです。
1300年代のオランダにコルベン(Kolven)と呼ばれる堅木の棒で、クリケットボールぐらいの大きさの球を打って打数を競う遊びがあり、記録はたくさん残っています。
真冬の氷の上でやっている絵画(写真)があるくらいですから、皆さん相当熱中したのでしょうね。
ひとホール1,000ヤード超の4ホールでプレーしていたという記録もあります。
ボールは羽毛を詰めた革製で、一説には最後はホールカップではなくボールのような丸いものに当てるルールだったというものもあります。
「koven」から「kolf」へ
オランダ説はかなりたくさんの記録、取引伝票、文献があります。
できる範囲で調べてみると、もっともな起源説は発祥地としてはオランダではないかといえます。
このゲーム(当初はフットコルベン)はやがてスコットランドに渡り、”kolven”は”kolf” へと変わりました。
”Kolf"はスコットランドに渡ってから土地の言葉で言いやすい”golfe(golf)” と呼ばれるようになったわけです。
そもそもスコットランドには「Gowf(打つ)」という方言がありましたが、ミックスされたか訛ったかと想像されていますが相互の関係はわかりません。
イギリス人でゴルフ史家のアーチー・ベアードさんは「正しい起源説」だと唱えています。
近年、オランダからスコットランドへのゴルフボール輸出書類が見つかり、これが発見されたことでにわかにゴルフ史の新たなページを彩ることになっています。
オランダの「Kolf」はやがて海を渡り、スコットランドで成熟した
アーチーさんはこういう話をしています。
「実はオランダのコルベンの人気は高かったものの、肝心のクラブに使う優れた木材が国内から産出されなかったことが原因で次第に衰退した」
スコットランドにはクラブに使う木材が豊富でした。
すでにボール作りの技術が高かったオランダから、ボール用の原材料やフェザリーボールが海を越えて対岸のスコットランドに伝わりました。
それが先ほどの、最近見つかったボールの輸入書類のことです。
こうして土地に恵まれたスコットランドで、400年余りゴルフは発展を続けたのです。
まだまだある発祥地説に日本も?
フランダース(フランドル)地方というとベルギー、ゲントの町の北に位置する美しい街です。
この町の博物館には「聖職者日記」という書物があります。
1420年に一つのスケッチが描かれていて、これぞまさにパッティングの様子にみえます。
女性(らしき)ひとが野外で低い姿勢からとっているのはパターの時に間違いなさそう。
それがゴルフはフランダースからだという説の根拠になっています。
諸説の中には日本も登場します。
クラブとボールがあって初めてゴルフというならネアンデルタール人が棒で石を叩いても、「ゴルフ」とはいえそうもありません。
8世紀の奈良時代に「投壺(とうこ)」というゲームがそうだというわけです。
弓矢の先に丸い固そうな球がついたもの(矢羽根)を、少し離れたところの壺に入れるというものです。
もう一つ、「十合鞘御刀子(じゅうごうざやのおんとうす)」です。
10本の刀や錘などが一つの大きな鞘に納められています。
これはキャディバッグにおさまったクラブの様子にそっくりです。
ほかにはフランスの「ショール」などはよく耳にします。
14世紀半ばにイングランドで流行った「カンブタ(カンブカ)」もそうです。
羽根製のボールをひとつ、地面に記された印に向けてクラブを使い転がしたのです。
このような発祥地説を唱える歴史家は多士済々、世界中に軽く100以上あります。
壮大なゴルフの歴史と起源、後編のまとめ
こうしてまとめてみると、ゴルフには悠久の起源と歴史がありますね。
”Golf”というネーミングも、14世紀に人々が興じたオランダ語の「フットコルベン」から来ているということもかなりの確率で間違いなさそうですね。
1457年、ジェームス2世が発したゴルフ禁止令ですが、ほとんどの国民は無視をしてゴルフを楽しんでいたようです。
その後、大航海時代(15~17世紀中頃)を経て1760年代にイギリスに産業革命が起こり、ゴルフはアメリカ、インド、日本、オーストラリアなど世界各国に展開していきました。
ゴルフコースの数(2017年)は全世界の205ヶ国、およそ33,100コースあります。
東京オリンピックまでに日本のジュニアも育ち活躍してくれるでしょう。
ひとりでも多くのゴルフファンに、ゴルフの壮大な歴史と起源を知ってほしいものです。