グランドスラムの言葉が出てくるジャンルはいくつかあります。どの使い方にも共通するのは、「主だったものの完全制覇」的な意味を持っています。
野球の満塁ホームラン、テニスの”全豪・全仏・全米・ウインブルトン”などをひとくくりにした言葉が有名です。
柔道にはグランドスラムの名を冠した大会があり、プロレス、ラグビー、ボクシング、モータースポーツ、マラソン、果ては囲碁に至るまで広範に使われています。
ゴルフでは4大メジャー(女子ゴルフ・シニアは5大メジャー)といわれる大会を制覇した者の称号、またはその大会名で呼びます。
ゴルフのグランドスラムを制した者には誰がいるのか?現在リーチがかかっているのは誰なのか?
今回はそんなグランドスラムにまつわるお話です。
グランドスラムの語源
grandは最高のとか主要なものの意味で、Slamは一掃する、勢いよく閉めるという意味を持ち、スラム街のSlumとは別です。
語源はトランプの(コントラクト)ブリッジから派生しました。ブリッジは4名で行い、向かい合った者同士はペアになります。
52枚のカードをひとり13枚ずつ配り、ビッド(競り)したりパスしたりしながらトリック(1巡)させ、13トリックで1勝負になります。
スラムボーナスというルールがあって、コントラクト(宣言)7でビッドし、13トリックすべて取って完全勝利を果たすことを「グランドスラム」と呼んだのが語源です。
2017年のメジャーチャンピオンは?
ゴルフのグランドスラムの対象になる試合は男子ツアーで4試合あり、女子とシニアはそれぞれ5試合です。
みなさんは2017年の優勝者を何人ご記憶ですか?
<男子ゴルフ>
・マスターズ・トーナメント(セルヒオ・ガルシア)
・全米オープン(ブルックス・ケプカ)
・全英オープン(ジョーダン・スピース)
・全米ゴルフ選手権(ジャスティン・トーマス)
<女子ゴルフ>
・(ANAインスピレーション)クラフト・ナビスコ選手権(ユ・ソヨン)
・全米女子プロゴルフ選手権(ダニエル・カング)
・全英女子オープン(キム・インキョン)
・全米女子オープン(パク・ソンヒョン)
・エビアン選手権(アナ・ノードクエスト)
<シニア=チャンピオンズ・ツアー>
・シニア・プレーヤーズ選手権(スコット・マキャロン)
・全米プロシニアゴルフ選手権(ベルンハルト・ランガ―)
・全米シニアオープン(ケニー・ペリー)
・全英シニアオープン(ベルンハルト・ランガ―)
・リージョンズ・トラディション(ベルンハルト・ランガ―)
過去の偉大過ぎるグランドスラマーたち
すべてのメジャー大会を制覇した経験者だけには「グランドスラマー」という称号がつきます。
男子ツアーに限っては、キャリア(生涯通して)・グランドスラマーはたった5名しかいません。
カッコ内はメジャーを勝った回数と生年です。
- ジーン・サラゼン(7回=1902-1999)
- ベン・ホーガン(9回=1912-1997)
- ゲーリー・プレーヤー(8回=1935-)
- ジャック・ニクラウス(18回は最多記録=1940-)
- タイガー・ウッズ(14回=1975-)
いかがですか?
ここにアーノルド・パーマーとトム・ワトソンがいないことにお気づきでしょうか。
不思議なことに、パーマーもワトソンも7回勝ちながら、なんとお互いに全米プロ選手権だけはどうしても取れなかったんですね。
ゴルフ界の球聖ボビー・ジョーンズは、グランドスラマー以上とも言えるゴルファーでした。
彼は全米アマ、全英アマ、全米オープン、全英オープンの全ての大会を同年に優勝するという「年間グランドスラム」の偉業達成者です。
そして、その僅か1ヵ月後に28歳の若さで競技ゴルフを引退しました。
グランドスラムへリーチをかけた3名
さて、ここまでの解説でグランドスラム達成は、いかに偉大なことかということがお分かりかと思います。
そもそも、アメリカのツアーのシード権を持っている選手たちは「天才たち」といっていいでしょう。
どのプロもこの選手もその国の中では突出した、とても低い確率の才能を努力で花咲かせた一握りの兵(つわもの)どもです。
なのでその中でメジャーに勝つのはとても難度が高く、そのメジャーを全部制覇するグランドスラムはもっと高見の話で、生中(なまなか)なことで達成することはできません。
さて2018年、その難関に挑戦する権利を持つのは冒頭に掲げた3名の天才たちです。
目下6人目のキャリアグランドスラムに王手をかけている選手は、ローリー・マキロイ、フィル・ミケルソン、ジョーダン・スピースという選ばれし者だけです。
この3名がグランドスラムをとるためには?
さて、その条件は意外と様々です。面白いことに3名とも違うメジャー大会で分かれています。
全員がこの1年間で達成!なんてことになればそれはビッグニュースとなるでしょう。
ローリー・マキロイ
マスターズ制覇が条件です。
心配なのは2018年1月に告白した衝撃的な心臓疾患のことです。
2016年に中国の試合で食事からウイルス感染、左室肥大の症状があって最近受けた定期検診でわずかな不整脈が発覚したとのことです。
フィル・ミケルソン
フィルは驚くことに、メジャーのトップテン入りが38回(勝利は5回)あります!
ミケルソンが喉から手が出るタイトルはナショナル・オープンといわれる「全米オープン」ですが、過去この大会では2位に5回もなりました!
天才レフティーといわれた彼も47歳となっただけに、今年がラストチャンスかもしれません。
ジョーダン・スピース
そうしてみると可能性が一番高いのではないかと噂されるのがジョーダン・スピースです。
残されたトロフィーは「全米プロゴルフ選手権」のみ、もし勝てばわずか24歳の若さでグランドスラマーとなります。
ところがPGAの天才集団はそう簡単に許さないでしょう。
ジャスティン・トーマスやリッキー・ファウラー、それにわれらが松山英樹が敢然と阻止にかかります。
この兵たちのバトルは、今年も刺激が強いものになるでしょうね。
タイガーは”クワドラプル・グランド・スラマー”になれるか?
最後に「トリプル・グランドスラマー」の話に触れておきましょう。メジャー4大会をすべて3回以上勝っている人はそう呼ばれ、過去にたった二人しかいません。
それがジャック・ニクラウスとタイガー・ウッズです。
これは近100年の世界のプロゴルファーのなかで、誰が最強なのかを占う材料になります。
先ほど、5名のグランドスラマーのご紹介をしました。しかし、その中にトリプルどころかダブル・グランドスラム達成者はいません。
そのことだけ見ても、いかにニクラウスとタイガーだけが突出しているかがわかりますね。数百人、数千人の天才たちの、お山のてっぺんに立っているわけです。
すべてのメジャーを4回以上制覇すると「クワドラプル・グランド・スラマー(Quadruple Grand Slammer)」の金字塔が立ちます。
ニクラウスを見ると、ほかはすべて4回以上勝っているのに全英オープンだけが3回で惜しい!
ということは、タイガーは全米オープンと全英オープンに勝利した瞬間、歴史上初のクワドラプル・グランド・スラマーとなります。
グランドスラムのまとめ
途中で何度も出た言葉ですが、世界のトッププロというのは天才たちに間違いありません。
彼らはすべて幼少期からその才能を、それぞれの地域や周囲の関係者に認められて成長した数少ない人たちです。
タイガーやマキロイなどは、わずか3~5歳でニュースになりました。
スペイン人で天才画家のパブロ・ピカソが13歳の時、父のドン・ホセは息子の才能に遠く及ばないことを認め、ついに自らが描くことをやめたくらいですからね、子供でもその将来は分かるわけです。
そう考えるとアマチュアが気の合う仲間同士だけで和気藹々のゴルフってねぇ~、どれほど楽しかっていうことですね。
きっとプロのツアーは楽しいばかりではないに違いありません。
さぁ青空の下、アットホームな雰囲気でリラックスしながらゴルフを楽しみましょう!