誰がこんなところに池をつくったのぉ~~!
笑いながらこんなことを叫ぶ人がいました。
まったくですね、バンカーも同じです。大きな木の根本や打てそうもない藪の中など、ゴルフコースには罠がいっぱい仕掛けられています。
ボールを打つことができただけではコースデビューできません。
ではどんなことを学んだらいいのでしょうか?
それはマナーとルールで、特にルールは知らないと自分のスコアが申告できない、審判はいないスポーツですから自分の救済処置を自分で決められないとゲームになりません。
ウォーターハザードに入ったときやアンプレアブルでのニアレストポイントも、その時に行うドロップの仕方を知らないプレーヤーは「ゴルフコースの無免許運転者」と呼ばれてしまいます。
それに次回のR&Aのルール大改正でドロップの仕方も変わるとか?
ドロップとかニアレストポイントなど、ちょっと難しそうなネーミングですが読めば簡単にわかる、今回はニアレストポイントやドロップのルール解説です。
正しく知っておきたい拾い上げやドロップのルール
ゴルフルールには規則20に球の拾い上げ、ドロップ、プレース、誤所からのプレーについて書かれています。
この項の規則、意外なことに中級レベルの方で誤解している方がたくさんいます。
理解してしまうと簡単なことと書きましたが、わかっているつもりの勘違いがあって現場での処置ミスがかなりあります。
ゴルフはあるがままにが原則ですが、救済となるとつい自分に有利な計らいをしてしまうという、人間の弱点を露呈することもあります。
PGAのトーナメントで、タイガー・ウッズがドロップする位置が2~3ヤード違うのではないかというテレビの視聴者からの指摘でひと騒ぎあったことが記憶に蘇ります。
さて今回はそのあたりをわかりやすく、ドロップの歴史などを紐解きつつ用語の解説などからスタートしましょう。
ドロップほかの大幅なルール改正がある
先ほどもご紹介しましたが、ゴルフのルールは大きく舵を切ろうとしています。
2017年のR&A(世界ゴルフ協会=イギリス、セントアンドリュース)とUSGA(全米ゴルフ協会)が提案したルール改定案は画期的なものになりそうです。
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ゴルフルールが100年に一度の大改定!変更の目的は「時短・競技人口増」
これまでゴルフルールは旧態依然としていて、現代にマッチしていないものも多数存在していました。
しかし、2019年より「ゴルフルール大改革」が始まります。目的は「スピーディーなゴルフ」と「シンプル化による競技人口の増加」です。
果たしてどんなルール変更がなされるのか、まとめてみましたのでご覧ください。
ほんの一例にすぎませんが以下のようなことが検討中です。
①ドロップの仕方は肩からでなく、地面スレスレでも認められる。
②グリーンでパッティングしたら旗竿に当たっても無罰。
③「遠球先打」の原則を柔軟なものにして、場面によっては近い人から打てる。
改正の方向は、とにかく「ゴルフをよりシンプルに、より楽しくプレーできる」という骨子が伺えます。
もうひとつが近年話題の中心にある「プレーファースト」です。
R&AとUSGAは次回の改正を”ゴルフの近代化”と呼んでいます。
とにかくややこしい部分を削除し、トーナメントで競技委員が本部に問い合わせをしなければ解決しないという姿はあまりカッコいいものではありませんからね。
これからゴルフを趣味にしようという方々にとっては、とてもわかりやすいものになりそうです。
ともあれ、これはまだ先の話です。まずは現行の規則を学ばなければいけません。
ゴルフルールの歴史
世界のゴルフ界で、最初に「ルール」として登場したのが1774年の記録にある13か条の規則でした。
なんと、たった13項目でゴルフが成立したんですね。
今では公式のルールブックは200ページ越え、裁定集もほとんど同じ厚さでできています。
もっとも大昔のゴルフといえばマッチプレーだけでしたからね。
「ドロップ」という言葉の登場は270年も昔の1744年からでした。
①1744年のゴルフ規則第8条
「球が持ち去られるかまたは何らかの原因で紛失した場合、その球を最後にプレーした地点に戻って他の球をドロップしなければならない」と書かれています。この時点では明確な「ドロップ」の方法はまだありません。
②1809年ゴルフ規則
この時に初めてドロップの方法が明記されます。「頭上越しに後方へドロップすること」となっていて、後ろにポ~ンと放り投げたのでしょうね。
③1908年~1984年
この間は少し変わっています。「ホールに向かって直立し、球を肩越しにドロップする。投げてはいけない」となりました。
1984年のゴルフ規則改正から現在の方法(後述)になりました。
ドロップに関連した大事なゴルフ用語
拾い上げに関するゴルフ用語は多岐に渡ります。
ここでは代表的な用語とその意味について解説します。
①アンプレアブル
物理的にプレーまたはショットができないという意味です。
例外的に、ムリすればできるがルール上の救済を受けたほうが有利だと考える時に出てくる用語です。
アンプレヤブルは同伴競技者にハッキリ言葉で宣言する必要があります。1 打のペナルティを加えて以下の処置を選択します。
- 1打の罰で2クラブレングス以内にドロップ
- 当該のボールとピンを結んだ線上後方(無制限)にドロップ
- 前打に戻って同じ場所から打ち直し
注=バンカー内のアンプレアブルは、同じバンカーの中にドロップで外には出せません。
②プレースとリプレース
リプレースは元あったそのままの位置に置くことで、プレースは異なる場所です。
③ニアレストポイント
公式ルールではNearest Point of Reliefといいます。
簡単にいうと、救済を受ける時にスイングできる最も近い場所で、救済地の外であってピンに近づかない場所と決められています。
④誤所からのプレー
救済を受けた時その他で、ルールに決められた正しい位置からプレーをしなかった場合のことで、通常は2打罰が科されます。
勘違いなどで犯しやすい違反ですが、ケースによって戻さないと失格もあります。
ニアレストポイントとドロップの具体的な方法
池にボールが落ちた時に代表されるニアレストポイントの位置決めですが、アマチュアの中にはかなりの経験者でも勘違いしている方がいます。
よく見るのは池にボールがポチャンと落ちた真横の地面にドロップするようなシーンです。
これはニアレストポイントの正しい知識がないケースですね。
飛距離がそのままなので、ルールを間違えたというより自分に有利な処置であるとみなされます。
この例のように、ニアレストポイントとドロップは一対のものとして記憶してください。
以下にその具体的な方法を説明します。
救済が受けられる場合
カート道路やカジュアル・ウォーターなどでは罰なしに救済を受けられます。
池やハザードでは救済の二ヤレスト・ポイントが発生します。
ニアレストポイントを間違えると誤所からのプレーで2打罰の違反になります。
必ず守らなければならないことはひとつのセットになっています。
①ホールに近づいてはいけない。
②落とせる範囲は1クラブ・レングス以内で、1クラブの距離を測るときはどのクラブを使っても良い。ヘッドカバーは外し、グリップの先端からクラブのヒールの角までがワンクラブレングスです。
③救済を受けた場所にドロップしてはいけない。
ドロップの仕方の正しい知識
現行ルールでのドロップの仕方です。
①ボールの落下地点を確認する。
②まっすぐ立ってボールを持つ。
③その腕を伸ばして落下地点の上にボールを持っていく。
④ボールが肩の高さと同じになるように、高くても低くてもNG。
⑤そのまま、ボールに力を加えたりひねったりしないで落とす。
この5項目を守った上で上記のワンセット(必ず守らなければならないこと)でドロップします。
再ドロップの条件
ドロップしたボールが転がってしまい、規定以外の場所に行ったときなどは再ドロップします。
ドロップは2度までで、3回目はありません。2度目に落ちた地点にリプレースします。
再ドロップしなければいけない時は以下の通りです。
①ボールが自分またはキャディの足とか体の一部、または自分の携帯品に触れるか当たってしまった時。
②ドロップしたボールが、以下のケースに当てはまるとき。
③ハザード外から再びハザード内に転がったとき。
④1クラブレングス、または2クラブレングス以上転がったとき。
⑤グリーン外にドロップしたらグリーン内に入ったとき。
⑥ピンに近づいてしまったとき。
⑦OBに転がり込んだとき。
⑧動かせない障害物、カジュアルウォーター、修理地など救済を受けた障害のある場所に戻ってしまった。
池の救済を受けてドロップしたらまた池に入ったときはこの例に該当します。
ニアレストポイントとドロップのまとめ
今回ご案内したニアレストポイントとドロップの基本的ルールさえ頭に入れてあれば、実際のコースで遭遇することの90%以上は簡単に処置できます。
最後にあまり守られていない注意点を書いておきましょう。
カート道路、排水溝の蓋やスプリンクラーなどは動かせない障害物です。そこからの救済を受けるときにマークしないで拾い上げる人がいますが、これは良くない行為です。
元あった場所が特定できなくなるので、救済処理は真っ先にボールのマークをすることからはじめましょう。
マークはボール地点、ニアレストポイント、クラブレングスの最大範囲の最低三か所に置く必要があります。それはボールのマーカーでなくても、ティーペグや近くのルースインペディメントでも事足ります。
こうした知識があると何も心配することなくゴルフが楽しめます。