今回はゴルフがビジネスに役立つスポーツであるということを、未経験者の方やこれから社会に出られて頑張っていく新入社員に向けたメッセージとして寄稿してみました。
ゴルフとビジネスというとどうしても接待ゴルフというイメージがあるかと思いますが、本文の内容は全く違います。
新入社員の方だけでなくとも、会社で中堅と呼ばれるポストに就いている方にも是非読んでもらいたい記事です。
題材はある大きな会社の新入社員教育から取材したものです。
ゴルフは大衆化し社会との関りが大きくなっている
いまやゴルフはおじさんのスポーツでは無くなってきました。
電車を待っている時に傘でスイングをしているような若者はあまり見かけませんが、打ちっ放しではストイックに練習をし、そしてゴルフ場でのプレー姿やクラブハウスでの立ち振る舞いなどは目を見張るものがあり、お手本にすべき存在の方たちが大勢います。
むしろバブル期からゴルフに興じているおじさんたちの方がマナーや態度が悪いのではないかと思うくらい。
そして、そんなプレーがスマートな若者たちは総じて仕事も良く出来ます。
もともとビジネスの素質があったからなのか、それともゴルフから教わったことがビジネスに活かされているのかは、もっと深いところを覗いて見ないとなんとも言えませんが、いずれにせよ優秀です。
社会の地位の上下はゴルフコースにはない
英語ってある意味ユニークですよね。
”You”という単語ひとつであなたでも息子でも、部下であろう上司であっても"You"ですからね。
受け取るほうが言葉の中にあるリスペクトレベル、親密さとか愛情をくみ取ることになります。
ゴルフも見方によっては同じようなところがあります。
とにかく、すべてのゴルファーが共有するものはたった一つ”エチケットとルール”しかありませんからね。
フィジカル勝負ではないため、知識や経験則が生かされるところも平等です。
年齢も然り、3世代が一緒に楽しめるスポーツです。
ビジネスでは職種も役職も立場も違う多様な人たちと、同じフィールドで楽しめるなんてすばらしいスポーツです。
若い社会人にとって「ゴルフ」は自分を向上させるためのツールという考え方で正しいのではないでしょうか。
男女だけではなく、ツールの使い方次第で多種多様な人たちとのコミュニケーションができるし、どうしたら円滑に進めていくことができるのかを学ぶこともできます。
学生時代から社会人になって戸惑うこと
では、新入社員時代を思い起こしてください。
学生時代はお互い利害が小さいし常に周囲の人は同年代でした。
人間関係においても、常識や情報が似ていて、特に困ることもありませんでした。
コミュニケーションでも細かい説明も、交換する言葉の意味のすり合わせも不要でしたね。
しかし、会社に入ると同じゼミを隣で聞いていた仲間同士でも「立場」がはっきりするために困惑することの連続となります。
周囲の人もガラッと変わって層が厚くなりますから、意思の疎通が難しくなるのです。
社会人になってからは「営業先で相手がどう反応するのかわかない、意思が伝わらないから何事も上手くいかない」と悩むことがあります。
頑張り屋さんほど「こんなに頑張っているのにどうして会社は認めてくれないのだろう?」と落ち込む日々が続きます。
自分で良かれと判断し、リスクを怖れず勇気をもって実行したことが逆の評価になったりすると、そのうち仕事がわからなくなり人と関わることさえ怖くなります。
楽しみながら社会人の基本を学べるのがゴルフ
やはりなかなか捨てきれない自分だけの常識から、社会人の一般常識を身に付けるために「ビジネスマナー・講習会」などがあります。
挨拶、身だしなみ、上座下座、会話上の礼儀作法など、仕事に対するすべてを短時間で身につけなければなりません。
会社で仕事をする傍ら学ぶのは結構大変です。
ゴルフはプレーを通じてビジネスに必要な対人などのスキルを身につけることができます。
それも非常に手っ取り早く、楽しみながら覚えることが可能になります。
楽しんでいるうちに仕事上のゴルフ、いわゆる接待ゴルフなどの回数を重ねると、恥を掻くどころか驚くような成長を残す可能性もあります。
ゴルフのマナーや礼儀作法、根本的な考え方や品格という点で、若い会社員にこれほど適切な研修講座もありません。
年代も立場も違う方たちとの交流は、社内でうまくコミュニケーションがとれない企業内の上司と部下の溝を埋めるでしょう。
キャディ経験が教えてくれるもの
先日、千葉県下の名門コースの支配人さんと会食する機会がありました。
その席で、社会人がゴルフから学ぶことに関する有意義なお話を聞くことができました。
ある大きな観光会社の新入社員は、研修会が終わると職場配置する前にキャディの仕事をしてもらうのだそうです。
若い社員の中には「一流大学を出て、なんでキャディをしなければいけないのか?」と不満を漏らすものもいるそうです。
キャディは身分の低いものという感覚なんでしょう。
しかし、たった1か月のキャディ経験を済ませたとき、そんな増長した考えを持っていた人ほど成長して仕事に就くという話はとても興味深いものでした。
入社式以前に社会に対して不遜な人間が、キャディ経験から学んだ人間学を生かし、会社の大きな戦力になるとは驚きです。
若い社員が学んだものは「接客=お客心理」ということ
若い社員の中にはゴルフのゴの字も知らない人もいるそうですが、教わるとすぐに仕事のルーティンに慣れるそうです。
新人社員たちはたくさんのお客から「接客のコツ」を紙が水を吸うように素早く吸収します。
ゴルフをプレーする客も千差万別、年齢も男女もそれこそ品格などその幅は大変なものです。
でも、ゴルフのキャディを経験すると、お客さんの心理は手に取るようにわかります。
幸か不幸かゴルフは半日という長い時間の中でのお付き合いです。
そのひとの考え方、性格、品格、教養、育ちにとどまらず、人生観から日常生活までがまるで素通しガラスのように見えるスポーツです。
若い社会人にとって、これほど世間の常識を学べる場所もほかにはないことは納得できました。
お客様のために勉強するということ
当初、たった2~3日のキャディ研修では、まだ現場ではうまく対応できません。
慣れないころは、気分を害した客(スコアが悪かった?)からキャディのせいだと皮肉られます。
とにかくグリーンのラインも読めませんし、この方なら2打目はこのクラブがいいのかな…という気の利いた行動もとれませんからね。
しかし、頭脳の若い方たちは日に日に目覚ましい働きに変わるようです。
最初はただひたすら走るだけ、ボールとクラブをキレイに拭くだけだったのが1週間で豹変します。
そもそも、ゴルフのキャディはトップレベルのプロキャディーでない限り、仕事そのものはそんな難しいものではありませんからね。
彼らはすぐにコースとゴルフのマナーなどを理解します。
社会的レベルの高い方に対してのコミュニケーション能力は格段に進歩し、品格のない方の言動にいちいち反応しない術(すべ)も身につけて、上手に受け流すことができるようになりました。
多種多様な人と接するコツを覚える
研修を続けていくうちに、どうしたらお客様が喜ぶのかのツボも発見することができるようになります。
全く住む世界の違う人たちも、高齢の男性でもその夫人でも、人種に関係なく楽しませることを身につけていきます。
学生の頃は気の合う同年代の方ばかりでしたが、いざ社会に出てみると「自分の保身しか考えない上司」や「陰口を言って評判を落とす同僚」、そして「全く相手にしてくれない取引先」などの苦難が待ち受けていますが、キャディ経験を積むことでこれら全てを楽しませ、味方につける術を身につけることができるようになります。
このようにして身につくエンターテイメント性が本業に役に立ち、彼らの自信へと繋がっていくそうです。
新入社員の教育、人間向上に役立つゴルフのまとめ
今回はゴルフが社会で役に立つ要素などを、ある会社の新人の育て方からというアングルで考察してきました。
最近「サステナビリティー(Sustainability)」という言葉を耳にしませんか?
社会・環境・企業・事業などの広い分野で「持続可能性」と訳されて使われています。
今の社会では、それぞれの活動が「世代を超えて引き継がれるためにはどうしたらいいか」が大きなテーマとなっていることを示しています。
ゴルフはとんでもない広いスペースが必要で、周囲の自然環境と調和しないと評価も下がり余計なコストもかかります。
そのためにあまり安上がりな趣味にはなりませんが、底辺の拡大はひとつの使命です。
そうしたゴルフをとりまく環境のサステナビリティーを維持するためにも、ゴルフが人間教育、人格向上のためになっていることをもっと知ってもらうことは大事なことではないでしょうか。