台風の影響(21・22号)ですが、国内ゴルフトーナメントは男女ともに2週連続で中止になりました。
こんなこともあるんですね。
日本のプロのツアーでは前例のない出来事でした。
さて、女子の試合は樋口久子・三菱電機レディース、埼玉県の武蔵丘ゴルフコースが会場でした。
2017年10月27~29日の予定でしたが、最終日荒天のため1時間半の中断後に中止決定、2日までの成績(通算7アンダー)永井花奈プロの初優勝と決まりましたね。
プロの世界で勝つことは大変なこと、永井花奈プロもこの試合に臨むのに一考しました。
彼女のクラブチョイスが良かったことが、とても大きく優勝に関係しました。
永井花奈プロは優勝会見で「UTに助けられた」と語っています。
UTに変えたら何が良かったのでしょうね?
今回はそんな永井花奈プロの優勝を支えたエピソードのいくつかをご紹介します。
※写真はすべてGDO(ゴルフ・ダイジェスト・オンライン)掲載のものです。
永井花奈の初優勝の影にあったUTとウェッジとキャディと
最初にご紹介するのは、永井花奈プロのプロフィールです。
東京の品川育ち、実家はラーメン屋さんの一人っ娘で彼女は看板娘でした。
15年ほど和歌山ラーメンがウリの「のりや食堂」を経営したお父さんは、以前彼女のキャディさん、今ではコーチであり移動の時の運転手役を務めています。
永井プロはかつてプロを目指したお父さんの好きなゴルフにあこがれ、保育園卒業アルバムに「大きくなったらプロゴルファーになる」と綴っています。
1997年6月16日生まれ。
6歳でゴルフを覚え、2012年には日刊アマ全日本レディースに優勝しました。
その後2016年のプロテストでトップ合格。
サンドセーブ率とリカバリー率はベストテンに入っています。(2017年11月現在)
それでは優勝に繋がった工夫と努力のご紹介です。
アマチュアの皆さんの参考になることがいっぱいあります。
永井花奈プロが予選落ちして考えたこと
優勝した前の週はLPGAツアーの「マスターズゴルフクラブレディー・レディース」がありましたが、そこで永井花奈プロは予選落ちしました。
しかし転んでもタダ起きないのがプロです。
彼女は次の週に工夫を加えました。
「ちょっと不安があった」6番アイアンを抜いて、28度のユーティリティ(UT)を入れたのです。
これは大当たりでした。
やはりアマチュアの方も苦手のクラブに替えて、自信をつけてから再挑戦するという方法は参考になります。
助けてくれたのは本間ゴルフ・ツアーワールド TW727
永井花奈プロが優勝のプレーに使ったユーティリティは「本間ゴルフ・ツアーワールド TW727」 という一般に市販されているクラブでした。
彼女は優勝が決まった時も、このユーティリティに相当助けられたと話しています。
このクラブは「アスリートのためのウッド型UT」としてすでに人気があります。
特徴としてはややヘッドが大きく見えて安心感があることが一つあるでしょう。
そのおかげで方向性は良く、アライメントもとりやすくなっています。
手にヘッドとシャフトの重さを感じられてボールが拾いやすいこと、多少芯を外しても方向性の維持ができるという長所は頼もしい限りですね。
全くの初心者の方には難しいかもしれませんが「タメ」のコツがわかり、ヘッドスピードが42m/sを超えてきたら一度は使ってみていいかもしれません。
プレイヤーにもよりますが、ハマったら手放せなくなるでしょう。
娘を医師にするよりもお金がかかったという父
女性ですからね、父に甘える気持ちがあるんでしょうか、二人はゴルフのことでよくやりあうそうです。
花奈さんはお父さんのダメ出しに「パパが悪いよ!」といって衝突するとか。
幼少期からゴルフの才能を察知したお父さんは、娘をアマ時代からプロのツアーに参加させようと億単位の投資をしたといいます。
医者にするよりカネがかかったと笑います。
比較的廉価な栃木県内のゴルフ場を往復しますが、やはり都内は高くて十分な練習はできません。
そこでも親子の工夫が生きました。
6畳一間のスペースしかない車庫を練習場に改造したのです。
冬場の3か月は節約の意味もかねて、その車庫が父子にとってメインの練習場になります。
そこで徹底的にアプローチの練習をしました。
プロでもアマでも、地道な練習は決して裏切らない
前週の予選落ち以来、自宅に戻ってからは車庫にこもって「最悪だったウェッジの距離感」に集中した練習をしました。
長年慣れ親しんだ狭い場所は、父子にとって落ち着く場所だそうで、ひたすらウェッジばかり打ち込みました。
アマチュアの方が見習うべき話はそこにもありました。
一日ラウンドして終わるとお風呂につかってサッと帰宅…、これもいいのですがラウンド終了後の練習が一番上達の栄養素になります。
プロになるわけじゃないから…とおっしゃらないで、せめてお風呂に入る前の30分はパッティンググリーンでやるだけで大分内容の濃いものになります。
そんな永井花奈プロの地道な練習は、彼女を裏切りませんでした。
2日目の最終18番ホール、降りしきる大粒の雨の中、78ヤードからのウェッジショットはピッタリ1mについてバーディ奪取!
結果的にここでとった1打のリードが、彼女を初勝利に導いたのです。
基礎体力作りにイチローの練習法が!?
そのほかにもたゆまぬ努力はあります。いわゆる基礎体力作りの工夫ですね。
どんなふうにしているのか興味がありますね。
女性ですからあまり強烈な筋トレなどはできません。
それだけに初心者の方にも参考になります。
毎日欠かさないのは50メールダッシュを最低5回、MLBのイチローも欠かさない「初動負荷トレ」を取り入れてからはかなり下半身が強化されたといいます。
おかげで飛距離が10ヤード伸びたと語っています。
知って損にならない「初動負荷トレーニング」
参考までにイチロー選手の「初動負荷トレーニング」を簡単にご紹介しましょう。
言葉の通り、「動作の始まりに負荷を掛ける」ことです。
ゴルフやほかのスポーツも同じで、筋肉は緩む→伸ばされる→縮むを繰り返します。
このサイクルが柔軟なほどしなやかにプレーができます。
もしあなたがドライバーショットの時、リキむ癖があるならこの初動負荷トレをおススメします。
リキむということは、この3つのサイクルのリズムが狂っているからにほかなりません。
イチロー選手は本来の反射神経と筋肉の3つのリズムを体に記憶させるために行っています。
YouTubeなどにも動画がありますので是非トライしてください。
やってみると体が軽くなった感覚と、筋肉の柔軟性を感じることができるでしょう。
ウェッジを1本増やして「ビンゴ!」
先ほども触れましたが、不安を抱えていた6番アイアンに替えて使ったユーティリティ(28度)は、試合中10回使いました。
そしてその後のウェッジも計算すると、なんと15回のパーオンに結び付けています。
やはり、漫然と同じクラブを使うのでは進歩がありませんね。
そういえば、今回の優勝の立役者になったウェッジにも隠された工夫とアイディアがありました。
昨年から、専属キャディの東勝年さんに「(ドライバーが平均230ヤードで飛ぶほうではない花奈プロなので)パー5の2オンは難しいから、ウェッジを3本にしよう」とアドバイスされ1本増やしました。
そんな効果は2日目に現れます。
4つあるパー5では3打も伸ばすことができました。
これもウェッジを増やしたというアイディアと練習の成果です。
大会前から、このコースは長距離有利だという評価を覆しました。
永井花奈プロの初優勝の陰にあった話のまとめ
先ほどのイチロー選手の「初動負荷のトレーニング」ご参考にしてくださいね。
これはストレッチとは違う感覚でいいでしょう。
「肥大させないで筋力をアップさせたい」という要求を実現するトレーニングです。
彼の説では野球もほかの共通するスポーツも、やたらと筋肉を肥大させるトレーニングをやってしまうとかえってプレーの邪魔になるとのことです。
確かに、過去のデビッド・デュバールもそうでしたね。
サプリメントと筋トレものすごいマッチョになってから、急激に表舞台から消え去ってしまいました。
おしまいはちょっと悲しいお話です。
今季の開幕からコンビを組んで、初優勝まで歩んできたキャディの東勝年さんとのお別れが近づいています。
職人気質で口数が少ない方ですが今年一年間、永井花奈プロは東キャディから多くを学んできました。
しかし、東さんは持病の腎臓が悪化して、医師から「もう少し悪くなると腎臓移植以外なくなる」と宣告されたのです。
安定と不安定を繰り返す中、今後の予定は見えないそうです。
今後のコンビは病状次第、東さんは18年目に入ったキャディの仕事も来季はまだ保留ですといいます。
最近、「他のキャディも探しておいてください」と花奈プロの両親に話す東さんが早く回復することを祈りたいと思います。