2013年から守ってきたPGAレギュラーツアーのシード権を失った石川遼プロ。
その気持ちはご自身だけでなく全国の遼くんファンも複雑です。
日本で生の石川プロを観たいファンは嬉しいですし、彼も応援してくれているファンへ自分の姿を見せることは一種の恩返しでもあるでしょう。
しかし、世界への挑戦から一時離脱してしまったショックは大きかったのではないでしょうか?
そこで今回は「石川遼プロがPGAへ復活するための道のり考察」と「そもそもPGAツアーってどんなところ?」について解説をしていきます。
いまいち分かりづらいPGAツアーの全貌や、遼くんが再び世界へ羽ばたいていく道程を理解すれば、今よりももっと楽しんでゴルフ観戦できることでしょう。
PGAツアーのシード権を取るためにはどうすればいいの?
ゴルフにはグローバルと名がつくツアーがあります。
- 米PGAツアー
- 欧州ツアー
- サンシャインツアー(南アフリカ)
- 豪州ツアー
- アジアンツアー
で「5大ツアー」と呼ばれています。
その中でも「世界最高峰」とも呼ばれるのはアメリカのPGAです。
なぜPGAツアーに良い選手が集まるかは、そのシステムとセッティングにあります。
例えばひと試合の賞金総額は日本のツアーとひと桁違い、さらにフェデックスカップポイントのプレーオフだけで10億円以上のボーナスも手に入ります。
すべてのジャンルの一流選手の思いは一緒でその世界でトップチーム、トップリーグに在籍することが夢でありステータスです。
野球界では大谷翔平選手がMLBのエンゼルスに入団しましたが、ゴルフなら誰もがPGAツアーに参戦することを希望します。
世界で一番層が厚いフィールドにいることで彼らは胸を張ります。
世界中のトッププロが集い、コースは最高難度にセッティングされ、選手一人ひとりのホスピタリティで対抗できるツアーはほかにありません。
米PGAの縁の下の力持ち=ウェブ・ドットコムツアー
そのPGAを下支えしているのがウェブ・ドットコムツアーです。
プロ野球で言うとPGAは1軍のセントラルリーグ・パシフィックリーグ、ウェブ・ドットコムツアーは2軍のイースタン・ウエスタンリーグといった感じです。
組織の簡単な説明は以下の通りです。
★PGAレギュラーツアー
1968年、PGA(全米プロゴルフ協会)から独立させ、1975年から”PGAツアー”となりました。
2013年にフォールシリーズ(シード枠争い)が廃止され、10月~翌年9月がワンシーズンとなり、2017-18年シーズンは、4大メジャー、プレーオフシリーズ、ライダーカップを含めると52試合組まれています。
★ウェブ・ドットコムツアー(web.com Tour)
PGAツアーが管理運営する下部ツアーです。
レギュラーツアーのシード権を掴む最大の登竜門です。
1990年にサテライトツアーとしてスタート、当初はベン・ホーガンツアーでナイキツアー、バイ・ドットコム・ツアーとなり、2011年まではネイションワイドツアーでした。
年間3勝すると自動的にPGAのシード権が与えられます。
★ウェブ・ドットコムツアー・ファイナルズ
2013年に改革され日本では「入れ替え戦」と呼ばれています。
※出場資格や条件などは後述します。
PGAでシード権を確保する方法
PGAのシード権とは、レギュラーツアーの予選ラウンド(ほとんど木曜日)からいきなり出場できる権利です。
さきほどウェブ・ドットコムツアーで年間3勝すると自動的にPGAツアーのシード権が付与されると言いましたが、そのほかにも様々なルートがあります。
フェデックスカップ
世界最王手の物流会社であるFedExが2005年からスポンサーになり、PGAの順位はフェデックスカップポイントで決まるようになりました。
通常の試合は優勝すると500ポイント、その他の試合は規模と歴史により変動します。
年間のフェデックスカップポイント(FedEx Cup Point)が上位125位以内なら、ほぼ無条件で来シーズンのシードが勝ち取れます。
ウェブドットコムツアー
年間3勝以外にもツアー参加できる条件として「上位25位以内」というものがあります。
76~100位の場合、翌年のウェブドットコムツアーの出場権を得ることが出来ます。
また、ウェブドットコムツアー・ファイナルズ(入れ替え戦)で25位以内に入ることでも翌年のPGAツアーに出場することが出来ます。
実はそのほかに並べれば38項目の出場優先権(シード権ではない)があります。
並べきれないので掻いつまんでご紹介すると、過去5年のメジャー(ザ・プレーヤーズ・チャンピオンを含む)選手権者とフェデックスカップ優勝者、過去3年のザ・ツアーチャンピオンとWGC(世界ゴルフ選手権=年4試合)ほか2試合の優勝者、生涯獲得賞金50位以内(ワンチャンス)、スポンサー推薦、マンデートーナメントの上位4名、前週の試合でベストテンに入った選手などなどです。
石川遼プロがPGAに復活するための道
石川遼プロは若い若いと思っていましたが2017年現在で26歳になりました。
2018年のスケジュールは国内に軸足を置いて、時間的に可能な限りウェブドットコムツアーに参戦するという方針のようです。
ではどうやったらPGAに復帰することができるのでしょうか?
スペシャル・テンポラリー・メンバーシップとは?
石川遼プロがカムバックするのに、可能性の高いルートはいくつかありますが、その中でも有力なのが「スペシャル・テンポラリー・メンバーシップ」です。
アメリカのPGAツアーメンバー以外はノンメンバーといわれます。
メジャー大会やWGC、あるいはマルチツアーの共同開催にはフェデックスカップポイントが設定されています。
ノンメンバーがこれらの試合で仮にポイントを獲得しても、公式のポイントランキングではゼロですが、ノンメンバーランキングというものがあります。
もし、そのポイント合計が前シーズンのフェデックスカップランキング150位以上になると、正規のシード権ではなく「スペシャルテンポラリーメンバーシップ」が与えられます。
過去に日本人選手が辿ったテンポラリー・メンバーの道
このスペシャルテンポラリーメンバーシップはPGAツアーからの招待なので、2013年の松山英樹プロのように辞退もできます。
逆にHSBCで3位タイになった岩田寛プロはそのチャンスをつかみました。
彼は2015年のウェブドットコムツアー・ファイナルズで好成績を上げたので、すんなりシード権を手にしました。
石川遼プロもこのルートでした。
2012年PGAに参加、主催者推薦で立て続けに好成績を上げ、プエルトリコ・オープンでは単独2位となりました。
そのシーズンはたった5試合で獲得賞金が582,471ドル!
これは前年150位の金額を突破したためスペシャルテンポラリーメンバーシップをゲットします。
とんとん拍子に稼ぎ、その年はフェデックスカップポイントだけではなく、賞金額でも良いという制度だった(今はない)ので、最終的に727,051ドルで122位相当になりシード権を獲得しました。
石川遼カムバックの道・ウェブ・ドットコムツアーのまとめ
最後に、PGAの正規ルートでシード権を取る、(前述の38項目以外の)175名をどう決めるかをまとめてみました。
- フェデックスカップポイントが125位以内
- ウェブドットコムツアーで年間25位以内
- ウェブドットコムツアー・ファイナルズから25名
レギュラーシーズンで126~200位の選手75名とウェブドットコムツアー26~100位の75名の選手にはファイナルズ出場権を与えられます。
この150名で4試合戦い、25位以内にシード権(制限付き)を与えられます。
レギュラーツアーの150位以内には無条件でウェブドットコムツアー翌年のシード権があり、石川遼プロはここに該当します。
それにスポンサー推薦の枠があり、メジャーなど国内での出場資格も取れます。
2018年4月からの国内ツアーにはすべて参戦すると表明している遼くんですが、一方でウェブドットコムツアーも積極参戦するとも言われており現状ではやや不鮮明な2018年。
バラバラになっていたスイングを国内で取り戻しつつ、「スペシャルテンポラリーメンバーシップ」を狙いにウェブドットコムツアー出場というのが今のところ有力なようですね。
まだ26歳とこれから飛躍していく世代ですから、ぜひ松山英樹選手とともに日本ゴルフ界・世界のゴルフ界を盛り上げていってほしいですね。