今回は「タイガー・ウッズのスティンガーショット」に関する楽しい知識編です。
打つ打たない、使う使わない以前に「スティンガーショットとは?」から入らないといけませんね。
実はこの話題、決して軽いものではありません。
ゴルフの神髄にせまるテーマであることは、みなさんが読み進めるごとに明らかになります。
ところで、みなさんはタイガー・ウッズのスティンガーショットをご覧になったことがありますか。
15年ほど前でしたか。
タイガーが放った3Wのスティンガーショットのボールが、なんと70~80ヤード付近まで地面を這うように飛び、彼の身長より高く上がらなかったのを見た時に息が止まりそうになりました。
スティンガーショットにみられる、ゴルフのアート感覚
スティンガーショットを初心者が打てるのかというテーマは少し後にして、まずゴルフの真髄の話です。
ゴルフはホンの些細な間違いでミスショットになる、逆にいえばホンのちょっと何かを変えただけでイメージに近いボールが打てる。
この両者は自転車の両輪と同じ、動いている間中並行し常にシンクロします。
初心者のころ、グリップはこう、アドレスはこうという具合に教わると、なんだか窮屈なスポーツだと勘違いするかもしれません。
じつはそれって逆なんです、考え方を入れ替えてみてください。
ゴルフは絵を描くのと同じで、絵はどんなものに何を描くのも自由です。
ゴルフは絵筆がクラブであるだけの違い、ルール的にも100%自由なんですね。
ということは打ち方にもオリジナルティが存在します。
クラブの番手の選び方、短く持ったりフェースを開いたり閉じたり、すべてはあなたのアイディア次第です。
ゴルフの真髄は、ルールの範囲内であれば自由にショットが楽しめるということです。
そのひとつがスティンガーショットなんですね。
スティンガーショットの様々な表現と違い
スティンガーショットはボールの置かれた状況、風や湿度などの環境、ターゲットを狙う上での障害物などを見極めたうえでベストだと判断したら使う奥の手のようなものです。
スティンガーショットに関連するゴルフ用語はいくつかあります。
- パンチショット
- ハーフショット
- スリークォーターショット
- ライン出しショット
- ノックダウンショット
ならばスティンガーショットとパンチショットはどこが違うかというと、ニュアンスほどの違いはありません。
スティンガー(語源は低空用の弾道ミサイル)ショットの”ノックダウン(低くドロー気味になるボールの打ち方)”という言葉はタイガーが最初に口にしたと記憶していますが、イマイチ定かではありません。
ただし、タイガーのスティンガーショットと、ほかのプロのパンチショットというと打ち方が明確に違います。
タイガーのスティンガーショットはパンチショットの進化したものといっても言い過ぎではありません。
一番違うのは手首の使い方で、彼独特の身体能力も関係し、返しのタイミングがかなり遅いのです。
初心者が練習することのメリット
実はパンチショットについては賛否両論があります。
初心者が習うべき基本だというレッスンコーチと、それは上級者やベテランで一定のハンデ以上の人がやるべき打法だと、真っ二つに分かれています。
筆者は前者に賛成で、パンチショット(スティンガーショット)ほど打ち方の良い教師であり覚えるべき技はないと考えています。
この(意外とやさしい)パンチショットは、100を切れないレベルの方にとっても、実戦で対応することで大きなスコアメイクの武器になります。
とはいえ、ゴルフはどんなショットであれ、使いこなす条件は研究熱心であることと練習することに尽きます。
パンチショット系の打ち方は、基本とは違う「レスキュー打法」といっていいでしょう。
それだけ、毎回使うものではなく非常サイレンが鳴った時にだけ使うショットといっても良いでしょう。
ボールを緊急搬送するスティンガーショット
ではその非常サイレンが鳴る状況とはどんな例があるんでしょう。
①アゲインストの強いときのティーショット、またはフェアウェイウッド。
②ライの悪い状況、または林からの脱出など。
③ビトウィーン(クラブの中間距離が残った時)
④曲げたらトラブルが待っている時。
⑤前方に枝などの障害があって低いボールしか打てないとき。
などなどです。
いかがですか、ゴルファーなら誰でも遭遇するシーンですね。
そう考えるとこの打ち方を自分のものにしておきたいと思いますよね。
スティンガーショットの打ち方
それではいよいよスティンガーショットの一般的な打ち方について解説していきます。
①スタンス幅を狭める
スティンガーショットはスタンス幅をすこし狭くしたほうが打ちやすくなります。
これは距離を求めないで方向性に集中するときのセオリーです。
②ターゲットに対しオープン、またはクローズ
比較的距離が短いときはオープンに、ティーショットなどではクローズにしたほうが打ちやすくなります。
タイガーはクローズ気味のスタンスを取ります。
③ボール位置は通常より極端に右
ボールを右に置く理由は「ロフトを立てるため」です。
振り幅が狭いので距離の補足と、入射角を大きくしてあくまでも打ち出し角を低くしたいためです。
④ハンドファーストとレートヒットは絶対
前述のロフトを立てることとコンビになります。
タイガーのスティンガーショットを測ったら、#5アイアンで77度(垂線から13度)の前倒しがありました。
ここにライン出しが易しくなる秘訣があります。
⑤コンパクトなスイングとダウンブロー
トップ位置もフィニッシュも通常位置まで持っていく必要がありません。
クラブやライによりますが、シャフトが垂直に立ったところ、またはバックスイングを3/4(スリークオーター)程度のイメージで十分です。
⑥インパクト後にヘッドを止める
インパクトの時がマックスのヘッドスピードで、あとはヘッドを止める感覚で長いフォローは取らない。
ちょうどハンマーで釘を打つのと同じイメージで大丈夫です。
ヘッドを止めるといっても、勢いである程度肩のあたりまではグリップが移動します。
⑦その他注意点
グリップは通常より2~3cm短く持ち、体重は左に70%、右に30%キープします。
インパクトでコッキング(手首の返し)はしない、そのあとも少しの間は左手の甲をターゲット方向を向けたままにします。
やってはいけないスティンガーショットの注意点
初心者の方に教えたところ、あまりにも想定以上の距離が出たのでびっくりしました。
たまたまインパクトの時のフェースが開かず閉じず、スイートスポットにバッチリ当たったためでした。
しかし、フェースローテーションをさせないでダウンブローにターフをあまりとらない打ち方は、スピン量がかなり抑えられるので飛ぶことは当たり前といえば当たり前なんですね。
注意点としては、ポスチャー(アドレスの時の構え方)の段階で右肩が下がったらアウトです。
先ほどから触れているように、ハンドファーストでダウンブロー、ボールを上から潰すイメージで打つべきところを、ボールの右半分からすくい打ちするのではスティンガーショットにはなりません。
またテイクバックの初めから右の脇が空くとスティンガーショットは打てません。
体重はやや左の股関節に大目に乗せて、常に体の中心にはグリップがある捻転、このアイアンの基本通りに回転させる点に変わりはありません。
タイガー・ウッズのスティンガーショットのまとめ
スティンガーショットはいろいろな言い方がありますから、なかにはゴチャゴチャになって混乱している方もおいでかもしれませんね。
でも今回でパンチショット系の用語が解明したかもしれませんね。
どの呼称も実際にはビミョーに異なるのですが、いずれにしてもコンパクトで低いライン出しを狙ったショットであり、基本的には似た者同士です。
スティンガーショットというと、ドライバーやフェアウェイウッド、せいぜいロングアイアンだけと考えている方もいらっしゃいますがそんなことはありません。
ウェッジでも向かい風に負けないショットを打ちたいときは極端に体重配分を変え、右利きの人は左足に80%も乗せて打つ”ウェッジスティンガー”もあります。
プロも人に寄りけりですが、スイングのリズムが悪く不調になるとパンチショットの練習で復調する人もいます。
スリークォーターですから体のブレを抑え、クラブのコントロールに集中できるとても効果的な方法です。