ゴルフは身体能力(運動神経や基礎体幹)が優れているに越したことはありませんが、それだけではない「ほかの要素」が色濃く反映する点で、ほかのスポーツと異なります。
ゴルフの「ほかの要素」は、うまい人と下手な人を差別化するポイントになります。
例えば知識(knowledge)、心的な強度(Mental)、経験(Experience)などなどです。
そして忘れていけないのが道具の選び方と使い方です。
ゴルフは素手ではなく道具をつかいます。
家を建てる大工さんも、ベテランになればなるほど道具にこだわります。
そして人とは違う「自分に合う道具」を選ぶのが実に上手です。
プロゴルファーは大工さんのような職人さんです。
ここに共通点があります。
ゴルフはクラブが主役でスイングが追従する形になりますから、そこは大きなポイントです。
今回はジョーダン・スピースの使用クラブと選び方などに迫ってみます。
スピースも同じ職人さんですから、クラブに人一倍のこだわりを持っているようです。
皆さんに、スピースと同じクラブを使ってくださいという記事ではありません。
スピースはギアを選ぶのに、どんな点に注目しているかや選び方のポイントなどを学んでいただきたいと考えています。
ジョーダン・スピースは「シンデレラボーイ」
まず、簡単なジョーダン・スピースのプロフィールをご紹介しておきましょう。
2007年頃からゴルフ界でその名前がウワサされるようになりました。
大々的に新聞に載ったのが、全米アマチュア・ジュニア選手権で2009年と2011年に2回目の優勝をした時でした。
このアマのビッグトーナメントで複数回勝ったのはタイガーしかいなかったからですね。
2013年、2~3%しかなかった出場確率(スポンサー推薦)をモノにして、ついに公式ツアーのジョンディア・クラシックに出場します。
ところがこのチャンスに、ザック・ジョンソンとデビット・ハーンとの3人プレーオフを制覇して初優勝してしまいました。
出場が難しかった大会といい、バンカーからのチップインで勝利を握ったことなどは、まるで石川遼プロのシンデレラ・ストーリーとそっくりでしたね。
その後は勢いにの乗って、マスターズ(2015)、全米オープン(2015)、全英オープン(2017)とメジャーで3勝しました。
そしてつい最近では、2017年7月に開催された全英オープンでの伝説が印象深いですね。
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ジョーダン・スピースに学ぶアンプレアブルの意味と活用方法/適応されるケースとされないケース
ゴルフ用語でたまに出てくる「アンプレアブル」
アンプレイ=プレイできないという意味ですが、この時の処置を「適応できる場合とそうでない場合」があります。
アンプレアブルとはどんなルールなのか、そしてアンプレアブルを活用した実際のケースを交えながら解説をしていきます。
最終日の13番で喫したアンプレアブル、あの絶体絶命のシーンで放ったスーパーショットは今後も語り継がれることでしょう。
歴史に残る3番アイアンのレプリカ(写真=おそらく718 T-MB)が使用コースのロイヤルバークデールGCにスピースから届いたのはその3か月後でした。
スタッツに目立つところがないのに世界ランキング2位の不思議
ジョーダン・スピースの飛距離は平均よりやや上くらいで、2016-17シーズンの結果は295.6ヤードで75位タイでした。
USPGAツアーの平均が290.9ヤードですから平均以上は飛んでいるものの、トップランカーとしてはかなり物足りないスタッツです。
ほかにも
- フェアウェイキープ率:101位
- ストロークゲインドパッティング:42位
とスタッツが振るわないのにもかかわらず常に世界ランキング上位にいます。
パーオン率は4位と健闘していますが、それでもスタッツだけでは世界2位(2017年11月現在)というのは不思議ですよね。
その秘密はアイアンの精度にあります。
さきほど紹介した「ストロークゲインドパッティング」というスタッツは、たとえば50%の確率で外す距離のパットの場合、平均すると1.5打となり1打で沈めたプレーヤーと2打のプレーヤーでは0.5打の差が付きますが、この差を数値化したものです。
スピースはアイアンショットが冴え渡っているため他プレーヤーよりもニアに寄せることができ、ストロークゲインドパッティングには表れない勝負強さが備わっているのです。
スピースのクラブセッティング
そんなジョーダン・スピースは一体どんなクラブセッティングをしているのか、とても気になりますよね。
それでは彼のクラブ選びについて紹介していきます。
スピースは気に入ったクラブは長く使うタイプです。
ドライバーはタイトリストの915D2、少し前のモデルです。
おそらく、クラブと自分のスイングをコーディネートした結果、使い慣れてしまって変えたくなくなったのかもしれません。
タイトリストの「915シリーズ」はまるで日本のゼクシオ
この915D2の特徴は、ソールのフェース側に「アクティブ リコイル チャンネル」が置かれているので、結果としてフェースの反発エリア拡大と低スピン化が実現しました。
ロフトの選択とネックの調整機能、あるいはシャフト次第で初心者が十分使えます。
アマチュアにも人気のモデルですが、スピースは普段の生活が左利きでありながらゴルフは右打ちです。
そういうことがこのモデルの一番いいところである”構えたときの安心感”が得られる460ccのヘッドがお気に入りなのかもしれません。
「915」のモデルシリーズはほかにもありますが、D2はボールが掴まえやすいことと高弾道が特徴です。
ほかのものより慣性モーメントを向上させたためにミスの許容性がグッと高められています。
使っている知り合いは「ゼクシオのアメリカバージョンだね」という感想でした。
アイアンは716AP2
スピースのアイアンはタイトリストの716AP2、こちらはすでに新モデル(718AP)が発売されている旧モデルです。
高比重タングステンウェイトをトゥとヒール側に配置することによって、非常に高い慣性モーメントを得ることができるクラブです。
また、プレウォーンリーディングエッジの採用により、クラブの抜けが良くスムーズにスイングすることができます。
本人も口にしていますが、アイアンには自信があるようです。
ドライビングディスタンスが平均やや上くらいでも世界ランクのトップスリーにいるのは、ここ一番というクラッチパットやアプローチがキレキレなんですね。
”Vokey”のウェッジは削り方によって5種類
それほどキレる、彼のウェッジはなにを使っているのでしょう?
それは当然タイトリスト、それもあのボーケイ(Vokey)ですね。
この名はマスタークラフトマン、ボブ・ボーケイからとりました。
世界でも日本でも、使用率がナンバーワンです。
ショートゲームで駆使されるウェッジは、距離を打ち分けることと、上げたり転がしたりという打ち出しのコントロールを求められます。
試合によってセッティングは若干変わりますが、スピースはSM6タイプのウェッジ4本を使い分けています。
①46-08 Fグラインド
②52-08 Fグラインド
③56-10 Sグラインド
④60-04 Lグラインド
※最初の数字がロフト
グラインドは”削り方”のことで、削る機械をグラインダーといいます。
スピースはソールの形状が異なる4種類を、フェアウェイか深いラフか、あるいはバンカーなどのライコンディションによって使い分けているわけです。
ちなみに、ボーケイにはソールの削り方が5種類あります。
F・S・K・M・Lとなっています。
それぞれはその方の好みと技術レベルで選択します。
FやSはやさしめで、MやLはハイテクニックが必要です。
スピースのウェッジの選び方は?
アマでもプロでも、ワンラウンドにウェッジを使う頻度は非常に高いものです。
特に初心者はパーオンしませんから、グリーンから20ヤード以内でショットすることが多く、ラフやバンカーのことを考えるとドライバーとあまり変わらない回数、またはそれ以上使用します。
まだ100が切れない間はあまりドライバーばかりにこだわるのはいけない、アプローチのことウェッジのことを研究してくださいという理由はそこにあります。
スピースが来日した時に、チラッとウェッジ選びの話をしました。
その時のメモを見ると、初心者から上級者までのウェッジ選びのヒントがあります。
一部をご紹介しましょう。
スピースは構えた時の”顔”にこだわる
選び方のポイントに「顔」で選ぶ方法があります。
スッと構えて顔のイメージからくる安心感は非常に大事です。
ショットに不安が先行しては失敗します。
そのショットを成功させるためには構えやすさが一番大事だと語っています。
スピースはさらに奥深いことを言っていました。
構えた時にウェッジの顔からくる信頼感とは、真っすぐに構えた時だけではありませんよということ。
ラフやバンカーなどライコンディションによってはフェースをオープンにしたり、ランニングアプローチではフェースのロフトを立てたりします。
トップライン(ウェッジの上の形)の丸みの形には個人差があります。
また構えた時の目線も、ボールに目がいきながら全体を見る方とネックのところを気にする方など様々です。
タイトリストのFORGEDはスグレモノ
そんなことを総合すると、初心者やアベレージゴルファーには「FORGED」がおススメです。
どなたにも共通するわけではないので一概に言えませんが、ワールドワイドモデルである「SM6」より日本人には合っているというのが定評です。
「FORGED」は先ほどのトップラインがすこしシャープな作りになっているのが特徴です。
日本人にはあまり丸っこいのが好まれないという傾向があります。
しかし、本来は手のひらをやや丸めたようにボールを拾えるイメージは、日本のコースと芝の種類、コースコンディションに受け入れられてしかるべきです。
ジョーダン・スピースの使用クラブのまとめ
スピースの使用クラブとウェッジの選び方に関するヒントはありましたか?
もしあなたが次回ウェッジを選ぶ機会がありましたら、ぜひフェースの形状(削り方)やロフトやライ角にこだわって、自分自身が構えた時に一番自信が持てるモデルを選んでみてくださいね。
ゴルフでは想定外のライから打たなければならない状況はたくさんあります。
そんな時こそ、”コイツなら”という自信があるクラブと、どよ~んとした不安に包まれてアドレスするのではスコアに差が出ないわけはありません。
いままでウェッジに無頓着だった方は、そんなことから上達の糸口が広がるものです。