プロ野球選手がゴルフをするとよく飛んでよく曲がります。
筆者も数回ご一緒した経験がありますが、その飛距離は腰を抜かすほどでした。
正直、”ナイスショット”を期待するより、いったいどんな弾道でどこへ行くのかに興味が集中したものです。
ジャンボ尾崎プロは元野球選手でした。
高校時代は当時の徳島海南高校のピッチャーとして1964年のセンバツで優勝した経験があります。
プロ野球は西鉄ライオンズ(今の西武)に入団してから3年でプロゴルファーに転身、ゴルフでのトータルの優勝回数は113回で世界のツアープロの中では最多です。
ゴルフと野球はしばしば並んで比較されるスポーツです。
動いているボールと止まっているボールの違いはありますが、道具を振ってボールに当てることは一緒です。
軸足と利き足、体重移動や肩の開き方などはよく似ているところがあります。
ということで、今回は野球とゴルフの違いや、プロ野球選手がなぜ飛んで曲がるのかを解説していきます。
野球とゴルフ、似ているようでだいぶ違うゲーム
野球とゴルフ、同じように道具を使ってボールを打つスポーツではありますが、異なるところは多岐に渡ります。
もっとも大きな違いは「動いているボールを打つ」「止まっているボールを打つ」といったところでしょうか。
ゴルフは野球のように飛んできたボールに反応するのではないのでやさしくもあり、反対に難しくも感じます。
バッティングフォームは(日本人は画一的なフォームが多いですが)みな特徴があります。
ジャイアンツファンならずとも知っているウォーレン・クロマティのようなクラウチングスタイルで結果を残している選手もいれば、イチロー選手のような振り子打法など様々です。
しかし、ことゴルフとなると多少の違いはあれど、プロゴルファーになるとみなスイングが画一的です。
それほどゴルフは「再現性を求められている」からです。
野球は距離が出れば出るほど長打になりやすく有利ですが、ゴルフは飛距離が出ればいいかというとそうでもありません。
ゴルフスコアのおよそ半分は120ヤード以内で作られると紹介しましたが、ゴルフで最優先されるべきは「正確性」です。
また、距離だけではなく方向性も求められるため、野球のように90度の広角でボールを飛ばす競技ではなく、5~10°以内という方向性の精度が命です。
野球の打ち方と大きな違いがあるゴルフ
野球もゴルフもボールを打ち返すという球技には違いありませんが、その打ち方には決定的な差があります。
野球にはヘッドを遅らせて右打ちというテクニックがありますが、ゴルフはアドレスがインパクトの形に戻せないとボールコントロールはできません。
ゴルフではボールと当たるときにフェースがスクエアになるのが基本です。
一般的に考えてもフェースが5°以上開くとまっすぐ飛ばすことはかなり困難になります。
プロ野球選手のバッティングフォームをスローで見ると、ほとんどの方がグリップエンドでスイングの主導を計る打ち方です。
バッティングのインパクトを利かせるためには、ヘッドを遅らせなければいけないという教えはジュニアのころからずっと一緒です。
これはゴルフのハンドファーストの形とそっくりです。
でも、ゴルフでハンドファーストはアプローチならまだしも、ドライバーなどでそれをしてしまうと成功率は少なくなり距離も出ません。
特に初心者の場合、アウトサイドインに入ってフェースが開いたら確実にスライスになります。
野球で打つことより投げる感覚がゴルフに生きる
先ほどのジャンボ尾崎プロはピッチャー出身のプロゴルファーです。
ジャンボさんは飛ばし屋で有名ですが、なぜ野球で「飛ばすことを仕事としていない」選手、つまり投手がゴルフ界で飛ばし屋になれたのでしょうか?
それにはこんな秘密があります。
上記はアイアンショットですが、それでもクラブがしなっているのが分かります。
シャフトが長く柔らかいドライバーなら尚更です。
ジャンボさんの飛びはピッチャー特有の腕のしなりを、ゴルフのシャフトのしなりに置き換える運動神経があったものと推測しています。
野球選手が飛ばす理由はリストの強さだけでなく、ボールを投げる時の腕のしなりと腰の使い方がうまいからです。
野球経験者がスライスしてしまう理由
先ほども触れましたが、野球のバッティングで芯に当てようとするとハンドファースト、つまりバットのヘッドを遅らせて素早く返すことが条件です。
野球選手がドライバーで叩くと飛んで曲がる原因はここにあります。
言ってみればスライスの条件のオンパレードなんですね。
①ヘッドスピードがある
ヘッドスピードがあることがスライスを加速させています。
野球をしていた方なら42~48m/s程度はヘッドスピードがありますから、未経験者よりもスライスが発生する度合いが高くなります。
さらに、ドライバーはスイング中かなりしなっていますから、バットのタイミングでインパクトを迎えたと思っていたのにクラブヘッドを置いてけぼりにしてしまっていることがスライスの原因となります。
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②ハンドファーストによるスライス
日本野球では「ピッチャー返し」や「セカンドの頭上(右打ちの場合)を狙う」という指導がなされていることがあります。
いわゆる右打ちです。
自分がアウトになってしまってもランナーを進めるチャンスが生まれますからね。
でも、この教えがドライバーショットを難しくさせている場合があります。
この打ち方はハンドファーストでバットを遅らせることによって完成しますが、ゴルフだとヘッドが出てくるまでの「タメ」が必要です。
この一瞬の間というのが大きなスライスの原因を作っている犯人です。
野球経験者がスライスを克服するためには?
野球のスイングとゴルフのスイングは「別物」とまではいきませんが、スライスで悩んでいる方は違ったアプローチをすると良いです。
それはヒモを使った練習法です(家にあるバスタオルで代用が可能)。
まずスイングの姿勢を作りヒモを垂らします。
そして先端部分を結び「重り」代わりにします。
このヒモをゴルフクラブ代わりに振るだけで、クラブヘッドの遅れが実感できるようになります。
こちらの記事でスライスの直し方詳細を書いていますので、ぜひ参考にしてみてください。
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スライスが簡単に直る練習方法/これでドライバー恐怖症を克服!
スライスは原因がわかれば簡単に直せるものです。
この記事ではスライス解消のとっておき練習法をご紹介します。スライスで「ドライバー恐怖症」に陥ってしまっている方は是非読んでみてください。
また、根本的なスイング治療が必要な場合は「M-Tracer」などのスイング分析ができる練習器具を使ってみるのもひとつの手でしょう。
ソフトボール出身の名プレーヤー。岡本綾子プロ
これまで野球経験者についてお話ししてきましたが、野球と同じようなスポーツでソフトボールというものがあります。
ソフトボール出身のゴルフプレーヤーとして有名なのが岡本綾子プロです。
岡本プロは日米通算の優勝回数62回、アメリカの女子ツアーでも1987年には賞金女王になりました。
国内で有数のソフトボール強豪高校の愛媛・今治明徳高校で、投手としての特待生として迎えられ後の大和紡績でも大活躍しました。
国体で優勝してのご褒美がハワイ旅行、ここでゴルフを知って一目惚れしゴルファーの道を歩むことになりました。
そのとき20歳の娘さんが遅咲きながらそこまで立派になることは誰も予想しませんでした。
岡本綾子さんのスイングはソフトボールが原点だといわれています。
当時に男子プロと遜色なかったドライバーの飛距離を武器に数々の大会を優勝しましたが、力みのない振り子打法が下手投げの経験に生かされたのです。
独特のスイングリズム、ハーモニーを感じるといっても言い過ぎにならないテンポは今でも学ぶべきものを持っています。
ちなみにイチロー選手のバッティングは岡本綾子さんのフォームがベースになったそうです。
グリーン周りの短いアプローチ、コツは手首で力を調整するのではなく、両肩をゆったりと振り子のように打つことがポイントです。
岡本プロのスローを見ると、両肩とグリップの三角形が全く崩れていません。
アンダースローのスローの感覚は、ゴルフのピンに近づけるフィーリングと一致しています。
この辺りに、ソフトボールとゴルフの共通した秘訣が何かあるようです。
野球選手とゴルフの関係のまとめ
バッティングの基本にはインパクトで左足に体重を乗せていくというところがあります。
そこはゴルフも共通している点です。
ただし、野球では左足を浮かせたりしてインパクトの時にグッと前に踏み出すような動きは、ゴルフではご法度です。
冒頭でご説明した通り、ゴルフは再現性を求められます。
スイング中にステップすることは、スイング全体の不安定感になり再現性が薄れます。
再現性を増すためには、ポスチャー(アドレスで構えた姿勢)段階から背骨を伸ばすこと、お尻を突き出し気味にして下半身を安定させることが大事です。
野球よりやや前傾姿勢になることでグッと腰が入ります。
おヘソが下を向いたままの角度をインパクトでも維持することがポイントです。
ダウンスイングでおヘソが左右に流れたり、身体が起き上がっておヘソが上を向いたりすると芯に当てるのは難しくなります。
せっかく培った野球経験ですから双方の違いの知識を持てば、きっとその経験が生かせて上手なゴルフができることは間違いありません。