「寄せワン」という耳障りの良いゴルフ用語があります。
残り30ヤードからピタッとピンに近づけて、涼しい顔してワンパットなんて気持ちがいいに決まっています。
その寄せワン率がダントツに高いのが「ランニングアプローチ」です。
ゴルフを始めたばかりの方に限らず、ランニングアプローチをモノにすれば飛躍的にスコアアップします。
むしろ世界中のプロゴルファーや上級者はランニングアプローチを多用し、時には50ヤード近いショットまで転がしてしまうプレーヤーもいるぐらいです。
今回は初心者でも簡単に習得でき、さらには上級者までもが多用しているランニングアプローチについて解説していきます。
ランニング・アプローチが初心者に向いている理由
ティショットが会心の250ヤード!
その後目立ったミスもなく、パー5の3打目でグリーンまで20ヤード足らずまでやってきました。ボールは刈り込まれた花道にあり、寄せワンでパーどころか入れてバーディ!!…と密かに夢見てしまうシーンです。
気合を入れた4打目はサンドウェッジ。イメージはフワッとあげて2バウンドでピタッと止めるつもりでした。
でも飛んで行ったのはザックリ切り取られた芝生だけでした。ガックリして打った5打目はトップ!奥のバンカーへの直行便です。
ゴルフを始めたばかりの方だけでなく、中級者の方も上記のような経験は山ほどあるのではないでしょうか?
アプローチはザックリ分けて4種類あり、ピッチショット・ピッチエンドラン・ロブショット・それにランニングアプローチです。
ロブショットの打ち方解説はこちら
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フワッと高く上げるロブショットを打つコツは?打ち方と距離感を掴むためのメカニズム
アマチュアにとって、もっとも安全確実なアプローチというとランニング・アプローチがトップかもしれませんが、実はロブショットはその次にやさしいといっていいかもしれません。
今回はロブショットのメカニズムと打ち方について解説してみます。
ランニング・アプローチ以外のテクニックは高さと力加減と双方が一致しないと寄せられません。
つまり「落としどころが遠くて狭い+高さのコントロールが難しい」のです。
さらに、ゴルフのボールは空中から落としてカップに入れる確率より、転がり(ラン)の線上にカップがあるときのほうがグッと上がります。
ラインは線であって点ではなく、構えた時からの安心感がメンタルを支える効果もあります。そのためランニング・アプローチは初心者でもやさしい打ち方なのです。
ランニングアプローチを使うと良い状況とは
ランニングアプローチは転がしてピンに寄せていく打ち方です。よってショット地点からピンまでの間に障害となるバンカーや深いラフがあるときには向いていません。
理想的なシチュエーションは
- 大きなグリーンでグリーンエッジ手前
- 花道からのアプローチショット
です。このような状況であれば積極的に使っていきたいショットです。
キャリーとランの配分は?
残り50ヤードを切ると何が何でもアプローチウェッジまたはサンドウェッジで、という方がいますが、状況によりけりで場合によっては7番アイアンなどを使うのも良いでしょう。
というのも、転がして寄せるランニングアプローチもボールの打ち出しは多少宙に浮いてキャリーが発生します。
キャリーの距離は打ち出し角度とスイングスピードによって変わってきますが、サンドウェッジ・ピッチングウェッジ・8番アイアンで考えると、キャリーとランの配分はこのようになります。
クラブ | キャリー | ラン |
SW | 5 | 5 |
PW | 4 | 6 |
8I | 3 | 7 |
残り30ヤードでサンドウェッジを使うのなら、落としどころは中間の15ヤード付近、8番アイアンなら3分の1程度の10ヤード前後といった具合です。
ランニングアプローチの打ち方とコツ
なぜ「転がし」のほうが確実なのかというと、ひとつはクラブの振り幅が小さくなるためです。
アプローチの苦手意識を持たないためにもランニング・アプローチでやさしく寄せられる自信をつけておくべきです。
すこし上手になってからそのほかのテクニックを学ぶという手順が確実な上達法です。
それではここからは具体的なコツと練習方法などを解説します。
ランニング・アプローチはクラブを選びません。アッと驚くテクニックもご紹介していきます。
①距離を最優先に考える
まずはランニング・アプローチに対する基本的な考え方からです。
アプローチそのもののポイントは「距離が最優先」です。
ゴルフですから方向はどうでもいいとはいえません。
しかし初心者の方のミスの原因に、距離と方向をいっぺんに合わせようとするあまり、構えた時からどのくらい曲がるのかということばかりに気をとられ、肝心のフェースの芯に当てることを忘れてしまいがちです。
そもそも人間は2つ以上一緒に何かするのが難しいものです。
コツは大雑把に傾斜を読んだら芝目とかは全く無視、方向はアバウト、すべての神経を『距離感』のみに集中します。
これは意外と(中級者でも)大事なことで、ランニング・アプローチを成功させる第一条件です。
②ボールを置く位置は右足寄り
続いてボールの位置です。
右打ちの方は右足のシューズの幅の中で調節します。
本当はここですと書いてもいいのですが、ゴルフはその方によってスッと馴染むところとそうではなく違和感を持つ個人差があります。
ここではやや許容範囲を示して解説します。
右のシューズの幅の中で違和感なく構えられる位置ならどこでも大丈夫です。
基本的には右寄りは強い転がり、左に寄せるとスピンが入りやすいので止まりやすくなると理解してください。
さらに、左足下がりなどの条件が加わるとボール位置はさらに右に移動して、シューズ幅をはるかに越えても問題ありません。
万事ケースバイケースです。
③スタンス幅ボール2~3個
次はスタンス幅です。
基本はボール2~3個分の幅とし、グリーンエッジまでの距離が近かったり、クラブのロフトが立っている7番とか8番ならシューズ同士をくっつけてもいいでしょう。
この時は左足をクラブヘッドの幅程度引いて構えます。
体がややオープン気味になって打ちやすくなりますが、両肩の線まで開いてはいけません。
足元を固めることにより、クラブフェースが狙った位置に当たるようになります。
そもそも数ヤード~数10ヤードしか打たないので力は必要なく、体重移動も必要ありません。
初心者の方で距離感が合わない方は、ほとんど膝が流れてしまっています。
④クラブは短く持つ
ギュッと力いっぱい持っては距離が合わせられません。
ハーフスイングをしてクラブが抜けない程度の力で持ちます。
さらにランニング・アプローチはクラブを短く持ちます。
ピンまでの距離が近いほど短く持ち、場合によってはグリップのゴム部より下を持ってもかまいません。
アドレスの構えはハンドファーストでないと振りがギクシャクします。
この角度はスイング中ずっと保ちます。
時々手でこねるように、ヘッドがグリップより先に行ってしまう方がいますが距離も方向も失います。
⑤ポイントはリズム
メトロノームのようなチックタックの動きを脳裏に浮かべながら素直に振ると力みが消えます。
クラブヘッドの動きは芝生の上をブラシをかけるイメージです。
ゆったり振る方と、性急に力で早打ちする人のミス率の差はかなりあります。早振りはトップになって大けがをします。
⑥ボールの落とし場所
ボールの落としどころはグリーンエッジまでの距離を参考にします。
仮にエッジまでが3ヤード、エッジからカップまで7mとします。
この場合、エッジから1ヤード付近を落とし場所として決めます。つまりボールが落ちてから6ヤードのランを想定しているわけです。
キャリーが4に対しランが6の割合です。
上記はAW(アプローチウェッジ)での参考として出しています。もちろん個人により若干の差があるのものの、基本的にはこのぐらいと覚えておけば良いです。
また前述の表を参考にしてみるのも良いですね。
またカップまで9mあるときはPW、12mなら9番アイアンとクラブを変えるだけで打ち方は常に一緒です。
落としどころは変えず、持つクラブを変えて調節するだけなので、実際はとても簡単にできます。
落としどころさえ掴めば転がる距離をクラブまかせで打つことができるということは、必ずしもウェッジでなくてもできます。
時にはフェアウェイウッドやユーティリティでやってみましょう。
コツを掴んだらやめられなくなります。
⑦失敗しやすい打ち方
最後に、これだけはやったらダメというNG集をご紹介しておきます。
膝が伸び縮みする
アプローチショットはとにかく距離感が一番大事です。
膝が伸び縮みすることでフェースの芯でボールを捉えることができなくなります。
足元は常に固定しましょう。
リズムが一定でない
リズムが一定していないとヘッドスピードもまちまちとなってしまうため、狙った通りの距離感を出しづらくなります。
素振りのリズムと一緒のタイミングでスイングすることが大事です。
テイクバックが大きい
距離感に合わないバックスイングを取ると、無意識下で「オーバーしてしまう」と考えてしまい、ダウンスイング中に加減をしてしまいます。
こうなると距離感もへったくれも無くなり、ミスにつながってしまいます。
ランニング・アプローチのまとめ
ゴルフでは飛距離以上にアプローチが大切です。
ゴルフの「飛距離」はアドバンテージですが、飛距離の数値はスコアに残りません。
車の運転でいうと、アプローチはハンドルさばきです。
スコアの約半分は20ヤード以内で作られます。
ショートゲームの上達こそがゴルフスコア100切りの第一歩です。
ぶんぶん振り回す飛ばし屋にグリーン周りで追いつき、そして追い越していくのも楽しいものです。