もし「プレー中にクラブが折れたり紛失したら」どうすればいいのか…
あまりお目にかかることのないシチュエーションですが、たとえば前半ホールでドライバーがすっぽ抜けて池の奥深くにINしてしまったときなど、あらかじめ車に積んでいた予備のドライバーを使うことができるのか?
また、新調したパターの調子が悪かったとき、後半戦に馴染みのパターに戻すことは出来るのか?
実際にプロゴルフツアーで起きた事件を基に解説していきます。
ウィルコックスのパター取り替え事件
今回はプロのルール違反に勘違いが重なった「失格事件」です。
時は2017年5月、アメリカツアー「ウェルズファーゴ選手権」のことでした。
30歳でバリバリのウイル・ウイルコックスが主人公です。
2日目に13ホール消化した段階で日没サスペンデッドでディレイ(順延)となりましたがこれで事件が起こります。
ウイルコックスは翌日の残りホールを、不調のパターと取り換えて別クラブでプレーしました。
ところがゴルフ規則では「やむを得ない理由で壊れたときなどを除いて、正規の1ラウンドの中でクラブを入れ替えてはならない」とされているのを知らなかったのです。
「そのパター、昨日のと違うんじゃない?」が発端で…
残りホール消化のために2ホール目のティショットを終えたとき、同伴者にパターが違うと指摘されます。
ウィルコックスは競技委員に確認しました。
どんなやり取りがあったかは全く不明、でもウィルコックスは「失格」と判断したのです。
彼はティショットを打った後、すぐにコースを後にしました。
ウィルコックスはSNSに「パターを途中で変えたために失格になってしまった、ハハハ」と書き込みします。
それを見た先輩プロが「おいおい、それは違う!4打罰(1ホール2打罰×2ホール)のはずだ」と返信したのです。
「マジ~~?」
ウィルコックスは競技委員から「失格」を宣せられたことをツアー機構に相談しましたが、競技委員は「失格とは言ってない。彼が自ら誤解して棄権した」と話しています。
いずれにせよ、ウィルコックスがルールを知らなかったことが原因で、結果的に「失格ではなく棄権」という記録だけが残りました。
ミスが発覚したときにはすでにカットラインとの戦いであったため、もし失格と勘違いをしなくても予選通過は難しかったでしょうが、ルールを知らないとこういうことが起きるという一例です。
クラブを交換できるケース・できないケース
さて、ウィルコックスの例に関しては「自らの意思でクラブを交換した」ことによる罰則(1ホールにつき2打の罰則)でしたが、そのほかにも色々なパターンがあります。
クラブが破損した場合
この「クラブの破損」という状態をどう考えるかで、罰則のあるなしが大きく変わります。
単純にいうと「故意なのかそうでないのか」という分岐になります。
たとえば「偶然クラブを落とした」「スイング中、何かにぶつかって破損した」などは故意とは言えず修理が可能、またはクラブが「プレーに適さない」場合には交換が可能になります。
13本のクラブでプレーしていた場合
ゴルフは最大14本まで所持することができるため、この場合は規則4-4aによりもう1本補充することが可能です。
裁定集では
13本でラウンドを始めたプレーヤーが、前半の9ホールをプレー中に、怒って(すなわち、通常のプレー中でないときに)自分のパターを折ってしまったので、9番ホールを終了後、プロショップでパターを買い、それをラウンドの残りで使用した。規則4-3a(iii)は通常のプレー中にクラブがプレーに適さなくなった場合しかクラブの取り替えを認めていないが、このケースの場合、プレーヤーは罰を受けるか。
という質問に対し「罰則なし」と明記されていますが、怒る気持ちは分かりますが態度に表してしまうのは良くないですね。
プレー中断中にクラブが折れた場合
このケースはウィルコックスの事件と似ているシチュエーションではあるものの「故意ではない」故障であった場合、「プレーに適さなくなった」と認められるため交換が可能です。
どうとでも取れるような気もしますが、ゴルフは紳士のスポーツである故、ウィルコックスはある意味紳士的な対応を取ったとも言えますね。
ゴルフクラブの取り換えについてのまとめ
プロでもアマでも、ゴルフのルールは根本的な部分であまり変わりません。
ゴルフはひとりでプレーするものですが、実際にはキャディさんや同伴競技者(局外者)とかゴルフカートもルースインペディメントも一緒です。
このような想定外のことも起こりますが、ウィルコックスのケースはルールの根本的な誤解です。
もし対応に悩んでしまった時はゴルフ裁定集を読み、正しい措置を学ぶようにしましょう。
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