ゴルファーならだれもが夢見るホールインワン。エースなんて呼ぶこともありますね。
でも確率で考えればはるかに難しいのが、パ-5を2打で上がる「アルバトロス」です。とても良い響きのネーミングですね。
他にも初級者なら1ラウンドに1回出たら大満足の「バーディ」や、1年に1回あるかないかの「イーグル」など、実に様々な呼び名のスコアネームが存在します。
これらの呼び名で共通しているのが「鳥の名前」です。一体なぜ、いつから、誰がこんな名前で呼ぶようになったのでしょうか?
パーとボギーの語源・由来
ゴルフではホール毎に規定打数というものが存在します。パー4とかパー5とかがそれに当たります。
ピッタリで上がればイーブンまたはパー、下回ればアンダーパー、上回ればオーバーパーと表現します。この辺はなんとなく理解できますね。
ちなみに「パー(Par)」という意味は昔の株式取引において基準のことをParと呼ぶことからゴルフでも使うようになった、というのが通説です。
またオーバーパーにもニックネームが付けられており、+1打で上がることを「ボギー(Bogey)」と呼びます。
これは当時流行していた歌から取った「Bogey man(ブギーマン)」から来ているとされ、ブギーからボギーへと派生していきました。
+2打をダブルボギー、+3打をトリプルボギーと呼びます。
そしてここからはタイトルにもある通り、鳥の名前が登場していきます。
ファインスコアには鳥の名前が
そのホールの第 1打目が直接カップインすることを ホールインワンとかエース(Ace)などといいます。
なかにはパー3に限った言葉と勘違いしている方もおいでですが、短いホールでは出やすいというだけで、ショート・ホール(和製英語)に限った話ではありません。
パー4はおろか、2002年にはアメリカのコロラド州のグリーンバレー・ランチ・ゴルフクラブの9番パー5(517ヤード)でマイケル・クリーンさんがホールインワン(世界最長記録)を達成しました。
パー3のホールインワンは、スコア上のニックネームが「イーグル」となり、パー5での快挙は「コンドル」といわれます。
ファインスコアのニックネーム
- パーより1打少ないときは「バーディ」
- パーより2打少ないときは「イーグル」
- パーより3打少ないときは「アルバトロスまたはダブルイーグル」
- パーより4打少ないときは「コンドルまたはダブルアルバトロスまたはトリプルイーグル」
アメリカは国鳥が白頭鷲(イーグル=国章)なので、アルバトロスよりイーグルと呼ぶ人のほうが多いように感じます。
「アルバトロス」は栄誉を称える称号
ゴルフではじめて鳥の名前が出現したというエピソードはいくつかありますが、一番信頼できる文献は1903年の出典です。
過去に記録がなかったパー5で、初めて「4」をゲットしたプレーヤーのボールが、あたかも空を舞う鳥のように見えたのか、「あれはボールじゃない、鳥だ!」と叫んだギャラリーの話がいっぺんに広まったというのが本当のようです。
やがて1打少ないスコアは数字でいわず、口々に「バーディ」というようになりました。
正確な執筆で名高い摂津茂和さんの著書に、コレクション第2巻「ゴルフ千夜一夜」があります。ここにはアルバトロスの隠れた逸話が書かれていますので、興味のある方はぜひ手に取ってみてください。
1921年、ボビー・ジョーンズが誰も聞いたことがないパーより3つ少ないスコアをたたき出しました。
パーより2つ少ないスコアを、いつしかバーディ(小鳥)よりすごいからイーグル(鷲)と呼ぶようになっていましたが、3つはありませんでした。
そして英米アマチュア国際対抗試合で、ボビーに負けたシリル・トレイが初めて「アルバトロス」を口にしたのです。
鳥の「アホウドリ」の豆知識
さて、鳥のほうのアルバトロス(Albatrus)の属名は最近ミトコンドリアDNA調査から変更され、フェバストリア(Phoebastria )となりました。
アルバトロスは主に南太平洋地域に生きる、白い大型の海鳥です。大海原の上で、ほんのわずかに羽ばたきを見せるだけで数時間も悠々と飛翔を続ける「海の女王」ともいわれます。
バシッ~と打ち出されたゴルフボールが、あまりにも並外れた高く大きく雄大な飛距離で飛翔する姿に重ね合わせたのでしょう。
日本語ではアホウドリ(信天翁とか阿呆鳥)というなんとも情けない名称ですよね。これは海外でのネーミングが日本語まで影響しなかったからです。
アホウドリは乱獲のために生息数が激減しました。主に布団用の羽毛で売るためだけの愚かな人たちのせいです。
人間に対する警戒心が薄く、接近しても陸上ではノロノロとした緩慢な動きしかできない鳥だったのでそんな不名誉な名前になりました。
かつては約1,000万羽も小笠原諸島から西之島にまで生息していましたが、いまは鳥島と尖閣諸島のみで2,500羽程度しかいません。
トキやコウノトリのような道を歩むのでしょうか?
アルバトロスが出る確率って?
それだけ難しいとされているアルバトロスは一体どのくらいの頻度で発生しているのでしょうか?
まずは少し難易度の低い(といったらちょっとおかしい気がしますが)ホールインワンの確率から見ていきましょう。
とんねるずのノリさんはたった100打でホールインワン!
2018年3月で終了した「とんねるずのみなさんのおかげでした」というバラエティ番組で、ホールインワンに挑戦したノリさん(木梨憲武さん=ハンデ自称22)がなんと収録後に入れてしまい、それがたまたまビデオに残っていました。
この時だけでいえば約100発に1回です。
アメリカの有力なゴルフ雑誌社がそれぞれにホールインワン確率を掲載しています。
それを見ると、平均して
- プロゴルファーは3,000~5,000回に一度
- アマチュアは20,000~40,000回に一度
とあります。
仮に30,000回に一度ということは、パー3が18ホールに4つあるとして、7,500ラウンドに一度という確率になりますね。
一年に75ラウンドプレーする方でも10年ですか!滅多にお目にかかれない訳です。
アルバトロスはホールインワンの100倍難しい
さきほどのアメリカの雑誌資料によると、アルバトロスは年間200~300回という推計でした。
ザックリ計算してみてもホールインワンの30,000回に対しアルバトロスが250回として、その差はなんと120倍。
もはやアマチュアゴルファーにとってはアンタッチャブルレコード(到達することのできない記録)ですね。
なお、パー4でのホールインワン、つまりアルバトロスは日本プロゴルフ界で中嶋常幸プロが達成しています。
その事件?は1998年の中日クラウンズで起きました。2日目の1番ホール、341ydのパ-4をたった1打で入れるというミラクルショットは、未だに国内ツアーで達成者はいません。
日米の記録もスゴイ!
マスターズでは1935年(第二回大会)、ジーン・サラゼンが最終日の15番ホール(パー5)でやってのけたアルバトロスが、マスターズを世界に知らしめた大きなエンジンになりました。
235ヤード残ったセカンドを、バッフィー(4番ウッド)でカップに放り込んだ歴史に残る1打は、世界を震撼させたショット(Shot heard around the world)として各国の新聞に取り上げられました。
日本のトーナメントでは男子に数多くありますが、実は女子の試合でもアルバトロスがたくさん出ています。
1984年の北海道女子オープンで増田節子プロが端を切って以来、足立香澄、福嶋晃子、川波由利、大竹エイカ、辛炫周、李知姫、上田桃子、有村智恵(2年連続)、佐々木慶子、渡邊彩香と総勢12名が記録しています。
この中で2011年の有村智恵はスゴイ記録を樹立しました。
同じスタンレーレディースで同じ日に8番でアルバトロス、16番でなんとホールインをやっちゃいましたね。
1万回に一度とか、いや3万回に一度だと大騒ぎになりました。
スコアネームの語源・由来まとめ
「アルバトロス」はすべてのゴルフファンのすぐ近くにいます。それがよくご存知の『Alba』という人気雑誌です。
版元のGGMグループは2007年パーゴルフと合併し、グローバルゴルフメディアグループ株式会社となりました。レッスンを中心に、時代が変わろうといつもためになる記事を読ませてくれる、ゴルフ雑誌やウェブでの老舗です。
この「Alba」こそ、1987年に小池書院時代に創刊されたゴルフ雑誌で、最初はそのものズバリ『ALBA TROSS-VIEW』という名前でした。
2017年には「GOLF Net TV」を立ち上げ、この年に30周年を迎えてますますゴルフ界の発展に寄与しています。
ここにもひっそりと「アルバトロス」が息づいています。