経験者ならわかると思いますが、ゴルフは「ナイスショットの数を競うのではなくミスをいかに少なくするか」というスポーツです。
どの程度の当たりをナイスショットと呼ぶのかという議論もありますが、どのレベルのプレーヤーにおいても自分が本当に満足できたショットなんて、1ラウンドにつき1回あるかないかです。
それよりも自分が許容できる範囲のショットをどれだけ多く打てるかがスコアメイクの大きな鍵となります。
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ゴルフミスショットの原因・理由と3つの対策/失敗こそが名コーチ!そこから何を得るかが重要
「いつもミスばかりでなかなか良いスコアが出ない」とお悩みのアナタ、そのショットは本当にミスショットですか?失敗してしまうメカニズムとミスショットに対する考え方、その対策について詳しく解説をしていきます。
この「許容範囲」をできるだけ狭くするために打ちっぱなしに行って練習をするわけですが、それでもいざ本番となるとダフリやトップといったミスを連発してしまいます。
これはライや傾斜などが練習場と違うことも理由ですが、その多くは「プレッシャー」が起因しています。
今回はこのプレッシャーを跳ね除けるためのメンタル、つまりイメージに関するお話です。
潜在意識はスイングに現れる
朝一のティショット、パー5でピンは遥か彼方に見えます。
「さぁ、飛ばすぞぉ!」、ボールを飛ばそうと思う心が自然に力みになり、体のバランスを崩します。
筋肉が固くなった分、スイングがいつものプレーン軌道から外れてしまい、正しいタイミングでクラブヘッドのリリースができなくなるからですね。
OBが近いぞ、フェアウェーは狭いぞ…などというイメージを持った時、あなたははどんなことを考えますか?
「曲げないようしよう」、「クラブフェースはスクウェアーにキープして…」などなどでしょうか。
結果的に体の回転が止まったり手打ちになり、左に引っかけたり体をブロックして右に大きくプッシュアウトしたりします。
せっかくゴルフ練習場で納得のいくスイングを身につけたはずなのにコースに出てみるとミスショットを放ってしまうのは、こういった潜在意識が邪魔をし、いつものスイングをさせてくれないからです。
ジュニアゴルファーは何故上手いのか
ジュニアたちにゴルフを教えていると気づくことがあります。彼らは人のスイングをながめ、見よう見まねでうまく打つことができます。
「門前小僧、習わぬ経を読む」などといいますが、子供たちは理屈を理解しないまま上手になるものです。
これは誰でも幼少期には強い潜在意識(Subconscious thought)があり、強烈な記憶力とのコンビのなせる業です。
行動や考え方に影響を与える意識であり、心の奥深い層に潜んだ意識などを言います。
この意識は大人になっても消えることはなく、薄れはしても脳内に残ります。
この潜在意識を利用するなら、プロゴルファーのスイングを何度も繰り返し見るだけでもイメージトレーニングになります。
うまいプレーヤーのイメージを頭に焼き付けて、似たように体を動かすという学習法は昔からあり、これが潜在意識を活用した学習法です。
同じ見るにしても、効果が強いか弱いかの差はあります。
①自分の体形によく似たプレーヤー
②自分が憧れているスイング
③自分があのように振ってみたいというリスペクトしているフォーム
などが潜在的にあったほうが早く身につきます。
良いイメージでスタンスする習慣
前述しましたが、飛ばそうとか曲げまいというイメージ(または発想)を、打つ前に持つことがミスショットの原因を作っている訳です。
相応にして初心者や100切り前の方が、自分のプレーに対する悪いイメージを考えすぎて失敗しています。このまま良くない思考パターンを排除する思考法を身につけないとずっと将来もそのままになる可能性があります。
イメージトレーニングを習慣化する
人間の脳は意外と不器用にできています。実際に目の前で起きていることと、想像(発想・空想)のなかで起こっていることの区別ができません。
ゴルフのイメージトレーニングとは、体を動かさないまま頭の中で自分の動作を思い描くトレーニング方法です。
初心者のうちからイメージトレーニングを行うと、それはそのまま実際のプレーに役立てることができます。
ジェイソン・デイのルーティン
プロゴルファーはイメージトレーニングを大切にします。
ジェイソン・デイというかつて世界ランク1位になったオーストラリアのプロが、ボールを打つ前にある「儀式」をしている光景をご覧になったことはありませんか?
ボール後方からターゲット方向を見て半眼になりますよね。まるで日本の菩薩像のようなまなざしです。
彼はあの時に弾道のイメージを出しているのですね。
現実にいる自分と距離を置いて、最善のイメージを醸し出すことで理想のショットを打つ力に変えているわけです。
打ちっぱなしでの練習にも一工夫
打ちっぱなし練習場で時間制の練習を申し込むのはいいのですが、ひたすら球数のみ多くする練習は弊害があります。
結局何も考えない、ミスした原因をチェックし改善する時間を持たない、アライメントのミスがどこから来たのかさえ考えないと、悪い癖を体の内側に固めることになります。
こうなるとミスショットとナイスショットの区別がつきません。
お金を掛けながら悪いところを直すのではなく、習慣化するだけの時間になってしまうわけですね。
そこが練習場であれ、ボールを打つときに目標地点を決めて運ぶ、ボールの弾道をどう描くか、そのためにはスイング軌道をどうするかなどいったん決めてから「払しょくする作業」をしてから打つようにしたほうがベターです。
実際に即したイメージを持ちつつ練習するとスイングに集中でき、いざコースに出た時のプレーも自然にイメージができます。
イメージトレーニングができると記憶と結果が近づく
練習場で現実的なイメージを少しでも持つと、メンタル面でも効果が出ます。
イメージするということは、打つ前から理想のポイントにボールを運んだことを体験することと等しいのです。最初に結果を作って記憶素子に埋め込むということなんですね。
実際のコースほどではなくても、プレッシャーのかけらは感じるはずで、どんな環境下でも自分の思ったとおりのスイングができやすくなります。
いつも漫然とボールをヒットするより、ゴルフの腕前はこんな小さな断片の積み重ねがスコアアップにつながるものです。
現実のコースでは木やバンカーを避けなければならないときや、目の前に池があって越えなければならないシチュエーションがいくらでもでてきます。
実際には万事うまくいくショットではないにせよ、良いイメージで飛んで行くボールを徹底的にイメージします。
スイングのリズム、ボールの滞空時間、落ちてからボールが転がる様子など、イメージトレーニングに現実的な時間の経過通り取り組むことで、コースに行くとそれが習慣となって自然にできます。
練習場での具体的なイメージ作り
ゴルフにおけるイメージ作りの大切さがご理解いただけたところで、実際に練習場で行うイメージ作りのアドバイスです。
ゴルフは常にプレッシャーと戦うことを求められますから、対処法は2つのパターンに分かれます。
- イメージを習慣化することでプレッシャーに慣れる
- イメージを単純化させ、優先順位をつける
それぞれ解説していきましょう。
常に良いイメージを持つための練習方法
これはかなり効果のある練習方法です。
まずは次回行く予定のあるゴルフ場のコースガイドをスマホで表示します。そして1番ホールから「擬似プレイ」を開始します。
ゴルフ練習場の広さなども関係してきますが、例えばネットとネットの間の支柱を参考にして「あそこからあそこまではフェアウェイ、その方向に打ち込んだらOBだな」とコースガイドを見ながら実際のホールをイメージします。
イメージすることができたら実際にスタートしましょう。もちろん選択するクラブは実際のホールと同じ番手です。もし引っ掛けて林に打ち込んだなと思ったら、しっかりとレイアップまで行います。
この練習方法が優れている点は、
- 毎回使用クラブを変更すること
- コースに近いプレッシャーを味わえること
です。ショットごとにしっかりとジェイソン・デイのようなルーティンを取り入れるとさらに効果的です。
また、コースのイメージがうまくできないという方は、今度行ったコースで「ショット位置からの写真」を撮ってみてください。
練習場で撮り溜めした写真を見返してイメージ作りに役立ててみてください。
イメージの単純化と優先順位を知る
プレッシャーがかかる時というのは言い換えれば「多くのことを考える必要がある時」でもあります。
「ピンが右に切ってあってその先がバンカー、でも左に打ちすぎちゃうと3パットするかもしれないな」などと考え始めると、手打ちになってしまったりミスに繋がってしまいます。
一番良い考え方は「ピンが右なら左の広いところを狙うべし」です。次に「ピンの位置がどこであれ、バンカーだけは避けるべし」ぐらいで良いでしょう。
もしトップしてグリーン奥まで転がってしまったり、ピンめがけて打ってバンカーに入ってしまったら目も当てられません。それこそバンカーから脱出してそこから3パット、なんてことも十分にありえます。
点でなく面で捉えるというイメージ
最後に初心者の方に参考となるイメージの作り方をご紹介しましょう。
まず始めのうちはとにかくボールを捉えることに集中すべきですが、あまりボールの小さなポイントとクラブフェースの1点のみ合わせるというイメージは持たないほうがいいでしょう。
むしろ、図のように四角いボールを平面で捉えるというイメージのほうがうまくいきます。
一番いけないのは、その後に及んでスイングのメカニズム的なことを色々考えたりすることです。構えたら余計なことはバッサリ削除し、目の前のボールに集中しましょう。
ゴルフのイメージがいかに大事かのまとめ
「人間は考える葦である」といわれる通り、思考を停止することはできず、無心になるにはそれなりのイメージトレーニングが必要です。
練習場名人といわれるタイプは、練習場で実にクラブを上手に振って上手く打てるのに、コースに出ると失敗ばかり。
こういう方はコースと練習場という場所の違いで、心理状態や思考パターンの落差が大きいからです。
とはいうものの、大なり小なり誰でもあることです。イメージをよくするコツはいくつかあります。
肩の回転にイメージが集中する方は、空から真下を見るアングルで良い回転のイメージを描くと効果があります。
またタメやトップの形に悩んだりこだわっている時は正面からのイメージを持つといいでしょう。
イメージは些細なことと思うかもしれませんが、実際はイメージ次第というのがゴルフです。
ショットの前に手首でワッグルをしながらイメージ作りをする、どんな時も明確でポジティブなイメージを描く、自分なりに決まったルーティンを作るなどが結果に大きな違いをもたらします。