あらゆるスポーツは、例外を除いてガチガチの力づくで行うものはあまりありません。
相撲やレスリングのような格闘技でさえ、力の抜き方を教えるそうです。
全身が固まってしまうと、タイミングよく柔軟にワザが掛けにくくなるからです。
今回はゴルフの「脱力」についてお話していきます。
飛ばしたいなら「脱力」の仕方を覚えないといけませんし、方向性の精度を高めたいなら「脱力」を極めましょう。
ゴルフで腕、手首、肩や首にチカラが入りすぎると、結果的にヘッドスピードが落ち芯を外すことになります。
さて、ゴルフでいう「脱力」とはどんなことなのでしょう。
まずはそのやり方や効果を学んでいきましょう。
「脱力」イコール全身の力を抜くことではない
プロゴルファーは脱力の方法を良く心得ています。
南アフリカのプロゴルファー、ルイ・ウーストハイゼンはプロ仲間からも脱力のうまさを参考にされます。
ウーストハイゼンはアーニー・エルスのジュニア育成基金で育ったためか、世界最高レベルといわれる”脱力の天才”エルスからそのワザを引き継いでいます。
余談ですが、エルスが子供たちの育成のために設けた施設は、甲子園球場の500倍近い敷地に、雄大なコースが3つとトレーニング施設も完備しています。
さて脱力とはいいますが、体中の力を抜いてしまうとボールは飛ばせません。
脱力と例えているのは、必要なところに力を集中し、力を入れてはいけないところをトコトン解放してあげるという意味です。
どれだけどこの筋肉の力を抜けばいいのか、人それぞれで若干の違いがありますが、脱力の仕方には基本があります。
それでは上手な脱力から飛距離を伸ばす方法をご紹介しましょう。
まず心の「脱力」からスタート
まず、メンタル面の脱力が必要です。
「さぁ、飛ばすぞ~~ォ!」
などと心の筋肉が張り切っていたらなにも始まりません。
ゴルフコースという場所はトラップ(罠)とハザードが散りばめられているところです。
池やOBを見ただけで筋肉がカチカチに固まってはいけません。
すべてのショットはパー3の1打目だという考えがとても大切です。
例えばドライバーのときに、落としどころに大きな「グリーン」を目に浮かべるような習慣づけをすると筋肉の萎縮が緩和されます。
過去に世界ランク1位になったジェイソン・デイがこの手法をとります。
ボール後方からターゲットを見る時に”目を細めて”じっとイメージするシーンをご覧になったことはありませんか?
プロゴルファーはそれぞれに上手な「脱力」の方法を身につけ、ルーティーンの中でうまく力を抜きますから、その都度”リラックスのための作業”はしなくても体内に習慣ができているわけです。
グリップは30%の力でOK
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日々の練習の賜物でもありますが、脱力することによってボールへ最大限の力を伝えることを体が覚えています。
そのキーとなるのが「グリップ」です。
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例えば、100%とは言いませんが90%くらいの力で握ってみてください。
二の腕の筋肉が硬直していませんか?
これだとグリップが支点となった「クラブが走る」状態をつくることができません。
初心者の方には、グリップはこんな軽くていいの?といわれるほどの力加減を推奨しています。
数値的に例えると”30%のイメージ”で十分です。
リラックスして左手の親指に右手の生命線をソフトに重ねるように握ります。
人それぞれに、二の腕の筋肉が表面的に盛り上がったりしない程度で十分緩まないグリップになります。
そうすると構えた時に、一番楽に振れてヘッドが走りそうな予感を感じる力の入れ方がわかります。
上半身を脱力させ下半身に力を入れる
テイクバックは右の股関節を意識することからはじめます。
右のお尻が右股関節からスッと後方に逃げて、自然に回転していく感覚が大事です。
そうすることによってスイングはヘッドに集中できます。
右のお尻とヘッドに注意が行くことで力みが減り、上半身をカチカチにさせることができなくなります。
テイクバックのポイントは意識の大半を下半身に集中させることで、これにより上半身の脱力が容易になり、下半身意識は同時にトップの脱力に繋がっていきます。
両肩に余計な力が入らず、アゴを引いたままでトップの形を想像することで、ダウンスイングへ意識が集中できます。
そうすることで、振り上げたグリップが反対方向に振り下ろされるときの切り返しがスムーズになり、ヘッドスピードが上がります。
ダウンスイングはデンデン太鼓のイメージで
ヘッドスピードの速いスイングをしようとすると、どうしても肩や腕・手首に力を集中させてしまいがちですが、これでは反対にヘッドスピードが落ちてしまいます。
速いヘッドスピードを実現させるには、体をデンデン太鼓のように使う必要があります。
デンデン太鼓は手持ち部分を指でクルクルと回すように動かすことで勢いよく音が鳴りますが、手首だけで回そうとしても大きな音を出すことは出来ません。
指=下半身、手首=上半身と考えると分かりやすいかもしれません。
上半身がガチガチだと、力感たっぷりにスイングしてもヘッドスピードが上がってこないというイメージがつくようになります。
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力感のない脱力スイングが強いインパクトに
上半身に無駄な力がなくなると頭の固定化ができます。
これによりインパクトの瞬間、ハンマー投げのハンマーと頭が引っ張り合いっこをして釣り合いを取るような打ち方、つまり頭は飛球線の逆方向に動きます。
松山英樹プロのスイングチェックをするとよくわかりますが、インパクトの打音とともに頭が後方へ引っ張られるような動きをします。
あれほど脱力しているのに、驚異的な飛距離を生み出すのはこういった要素をスイングに取り入れているからなんですね。
インパクトの瞬間は、クラブヘッドと自分の頭は1.3m~1.5mも離れています。
少しでも遠いほうが有利になることは当然ですね。
脱力スイングのまとめ
ゴルフスイングは関節の動きにによって左右されます。
指・手・腕・足・体感などの動きは、それぞれが繋がっている関節と筋肉群の動きで決まります。
関節を曲げる筋肉を屈筋といい、関節を伸ばす筋肉が伸筋といわれます。
アドレスでは体が前屈するため、腹筋(屈筋)に軽く力を入れると腕は脱力できます。
腹筋に力を入れると、同時に背筋(伸筋)に適度な力が加わり、それらの大きな筋肉に軽めの力感を与えることで肩や腕の筋肉を緩めることができます。
大きな筋肉に力を入れると、そのほかの筋肉を固める同時作業が人間にはできないからです。
これが究極の「脱力できる筋肉バランス」です。
一番手っ取り早いのは、練習場で1本のアイアンクラブを持ち、できる限りの力でグリップして打ったら、徐々に(感じで)20%づつ緩めていって数発ずつ打てば、グリップのゆるみ方ひとつでボールの飛び方のベストが見えてきます。