初夏のゴルフコースは一面の緑が輝き、この上ない美しい自然の世界になります。
緑の光は人の網膜にもっとも負担をかけないやさしい波長です。
「緑」はほかの色よりエネルギー消費がない色なので、長時間緑に囲まれていても疲れない、集中力を保つことができる色だそうです。
思えば世の中に「芝生」がなかったら、ゴルフがこれほどたくさんの人に愛されるスポーツになったでしょうか?
そもそも、スコットランドのリンクスに天然の芝生が生え、ウサギや羊が適当な長さに食んでくれたのがゴルフの発祥につながりました。
土の上ではボールが止まってくれませんし、打つときに適度な浮き加減があって初めてショットの技術が生かせます。
さて芝生のことをもっと学んでみましょう。
ゴルフコースにはどんな種類の芝生が使用されているかご存知ですか?
フェアウェイやラフ、低くきれいに刈りこまれローラーが掛けられたグリーンなど、芝生の知識を学ぶことによってゴルフに対する愛着が湧き、ますますゴルフが好きになるでしょう。
そして、ゴルフコースを大切にする心を育み上達のステップになります。
芝生の知識はあなたのプレーの手助けになります
グリーン周りでのアプローチの一例です。
ボールはオンしなかったもののグリーンサイドにうまく運びました。
ここからピンそばにアプローチできればパーも狙えます。
ライは左足上がりの浅いラフで、簡単そうに見えたのですが思わぬザックリをやってしまいました。
サンドウェッジのリーディングエッジが芝生の根に突っかかってしまったのですね。
「きっと打ち方が悪かったのだろう」と感じている方もいるでしょうが、芝生に関する知識が少し欠けていたことも影響しています。
そのことに気づかないと頭をひねって「おかしいなぁ?」となり、それ以降何度も繰り返すことになります。
およその場合、芝目は水が流れる方向と向きが一致します。
(他にも近くにある高い山から吹き込む風の影響や、日差しの差し込む角度などで変わることもあります)
アップヒルの時は逆目になることがよくあり、上から見ただけではわからなかったのですね。
芝生の生え方の知識さえあればザックリはなかったかもしれません。
知って損にならない芝生の歴史
ネパールでゴルフをプレーしたときのことです。
猿の大群がフェアウェイを横切ったり、標高差のためアイアンショットが2割増しの飛距離を出したり、フォアキャディーは前方の落下地点でここへ打てと手を振ったまま動かなかったり、とにかく日本国内とは一味も二味も違うゴルフが楽しめました。
その時初体験だったのがサンド・グリーンでした。
黒いコールタール交じりの砂ですから「グリーン」ではなく「ブラック」でした。
おもえば約100年前、日本にゴルフコース誕生した頃はこの「砂グリーン」でした。
その後、海外で使われているベントグラスが持ち込まれ、1932年(昭和7年)に開場した東京ゴルフ倶楽部朝霞コース、廣野ゴルフ倶楽部広野コースで初めて採用されました。
紆余曲折を経て日本には夏場に強い高麗芝がいいのではないかとなり、世界にたった一か国しかないダブルグリーン方式が誕生します。
ベントグラスと高麗の2グリーンを使用する時代を経て、現代のベントグラスオンリーのワングリーン方式に切り替えらえつつあります。
中でもペンクロスなどの品種改良、メンテナンス技術の向上、芝生育成の機械の発展が背景にありました。
グリーンの速い遅いはどうやって決まるの?
1950年代、当時のグリーンの刈高は6mm程度あり、とても遅いスピードでした。
日本のゴルフ興隆時代になると、オーガスタナショナルはじめメジャーのグリーンの速さが一種の世界的流行になりました。
1980年頃から次々と3mm以下の刈り高にも耐えうる品種が登場し、刈込機械はますます進化しました。
グリーンのスピードは7だとか9.5だとか、PGAのマスターズトーナメントなどでは13.5だとか聞いたことがありませんか。
プレーヤー同士が雑談の中で「今日のグリーンは早いね!」などといいますが、大方は感覚で言うことがほとんどです。
グリーンが早い遅いは、毎日コースが計測しています。
スタート前のキャディマスター室前に「今日のグリーンスピードは9.5フィート」などと貼り出されているのがそうです。
計測に使う道具はスティンプメーター (Stimpmeter)と呼ばれます。
エドワード・スティンプソン (Edward Stimpson)さんが発明したので、その名前がつきました。
どんな複雑な機械なのかなと思うかもしれませんが、実は単なる3フィート前後のⅬ型の棒です。
早朝、グリーンの数か所で計測します。
スティンプメーターを横にして下に置き、棒の途中の決められた位置にボールを置きます。
そっと棒の片側を持ち上げるとボールは自然に動き始め、そのままグリーンを転がって止まります。
その転がった距離(フィート)を数か所で測った平均値が「今日のグリーンスピード」になります。
当然数字が大きいほど速いグリーンとなります。
日本のコースの平均的なスピードは9フィート前後が標準でしょう。
芝生によって何が違うのか
日本ではどんな芝生の種類が使われているのでしょう。
基本的には日本芝(暖地のみ)か西洋芝の系統か、あるいは夏に枯れる寒冷地用か冬は枯れる暖かい地方用かの分類になります。
①野芝
耐寒性に優れほとんど管理が要らないので、北から南まで広くラフに使われています。
②高麗芝
昔から使われているポピュラーな芝です。
茎が太く踏み圧にも強いので、ティーグラウンドやフェアウェイの一部で使用されます。
一方、芝目が強くて傾斜と同じくらい転がりに影響し、あまりゴルファーに好かれず少なくなる一方です。
③姫高麗芝
最も葉幅が狭くワッ~と密集して生えますが、人に踏まれると弱い面があります。
④バミューダ
アメリカの広い範囲、沖縄などに多い暑さに強い芝です。
高麗系と同じで、極めて芝目が強い性格です。
⑤ティフトン
バミューダの改良種です。
⑥ベントグラス(ニューベント・ペンA2)
国内のグリーンで最も多く使われています。芝目が弱いので高速グリーン向きです。
最近は高温多湿に耐えられる改良品種がたくさん出てきました
⑦ブルーグラス(ケンタッキー系など)
北海道にいくとよく見られます。
⑧ライグラス
寒冷地のラフなどにあります。
ティーグラウンドのオーバーシード(常緑を保つ)には最適な芝生です。
⑨フェスキュー
やはり北海道などのラフ用ですが最近は暖地でも見かけるようになりました。
芝生の知識をコース攻略に生かそう!
少し前に、グリーンは水が流れる方向に芝目が向くと解説しました。
コース攻略に役立つ情報はまだまだあるんですね。これらの知識はすべてがアプローチ以外でも生かせます。
①足で踏みつぶされる
水が流れる方向だけではなく人が歩く方向にも芝目は流れます。
従ってグリーン周辺では、次のホールに向かって人が歩く方向に目がいきます。
また、富士山周辺のコースでは風が吹き込むため「富士山から順目に生える」ということになります。
②芝生によってクラブの抜けが違う
芝生はザックリ分けると「和芝と洋芝」の2種類に分類されます。
野芝や高麗芝などの和芝は葉が硬くて強く、その上ボールが乗るので比較的打ちやすいです。
反対にバミューダやフェスキューなどの洋芝は葉が細く柔らかいのでボールが沈み込みやすくなっています。
ボールが浮いていれば打ちやすいのは当たり前で、反対に沈み込んでしまっている場合はしっかりと打ち込まないと芝に引っかかり、クラブが綺麗に抜け無くなるといった特徴があります。
③時間によって向きを変える
種類によって一概に言えないものの、芝生は一般植物なので朝の日の出から太陽に向かって伸び、陽が落ちる頃はだんだんと西の方に伸びる性格があります。
④刈り込んでいる方向に順目になりやすい
芝刈り機をグリーンモアといいますが、早朝の刈り込みでは機械が刈っていく方向にトラ刈りになります。
午前中のフェアウェイでは、多少影響が残ります。
また、グリーン面の凹凸は機械の重さがかかると、傾斜に対して順目になることがあります。
⑤排水溝に向かって順目
グリーン周辺に排水溝があると、水は高い方から低い方へと流れるためその方向に順目になります。
排水溝を目安に覚えておくと良いでしょう。
芝生の知識になるお話のまとめ
パッティングのみならず、ショットにおいても芝目は大きな影響を与えますが、あまり意識せずにショットしている方が大半です。
冒頭のように芝生のことを意識せずにいると、ミスショットの本当の原因を掴めず上達のブレーキになってしまいます。
グリーンは傾斜と芝目(芝の種類も)でラインが決まります。
なんとなく「このくらいかな?」で打ち出すと、もしうまくいったとしても次のホールで上手くいくかどうかは分かりません。
「傾斜がこのくらいで順目(逆目)だからこのくらい曲がるだろう」と予測してパッティング、ズレていたらその分次ホール以降で微調整をしていくと、パット数は確実に縮まっていきます。
グリーン面の光っているほうに順目で、やや陰っていて色が濃く見える場所は逆目だという基本知識も持っていると良いでしょう。
パッティングラインは、打つ方向だけではなく逆から見ること、あるいはカップ回りの芝生の伸びている方向でもわかります。
ゴルフスコアはグリーンとアプローチの良し悪しにかかっているといっても言い過ぎではありません。
芝に関する知識を活かして「パターとアプローチの達人」になりましょう。