現代ゴルフは科学的なアプローチによって様々な謎が解明されています。
「ミート率」もそのひとつに入ります。
ざっくりと「芯に当てた確率?」とご理解されている方も多いかと思います。
結論的にはそうなりますが、実際には計算によって求められるものです。
この記事では、「ミート率の良し悪しが打球にどのような影響を与えているのか」そして「どのようにすればミート率が改善されていくのか」を、じっくりと解説していきます。
ミート率を上げる練習方法はこちら。
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ミート率を1.3まで上げて飛距離を20ヤード伸ばす5つの練習方法
飛距離アップといえばヘッドスピードの向上と思われている方も多いと思いますが、同等かそれ以上に重要なのが「ミート率アップ」です。
飛距離アップだけでなく「飛距離の安定性」にもつながり、自ずとスコアアップも目指すことができます。
今回はミート率向上のための練習方法をまとめてみましたのでご覧ください。
ミート率を計算する方程式がある
ミート率(スマッシュファクター=Smash Factor))はスイートスポットを捉える確率を、きちんとした計算式に当てはめて出された数値です。
「ボールの初速」÷「ヘッドスピード」ではじき出されます。
例えばヘッドスピードが40m/sで初速が50m/sの時は「ミート率1.25」となります。
ざっくり言えば、ミート率が高い人はパワーがボールにうまく伝わっているのだといえます。
ヘッドスピードが無駄なくボールに伝わり、打ち出しのボールに対して効率が良い当たり方だとなるわけです。
ハンマーで釘を打つときのイメージがわかりやすい
計算で出された数字を出されてもイマイチ掴みきれないかもしれません。
そこで上記写真のように「ハンマーでの釘打ち」をイメージしてみてください。
慣れないうちは釘が曲がってしまったりうまくいきませんが、コツをつかむと1発で板にグサッと食い込ませることができるようになります。
釘打ちでパワーロスが出る要素は、
①振り下ろすハンマーのスピードが遅い。
②ハンマーヘッドが加速しないで減速している。
③釘の頭部の平らな面と、ハンマーの打面の角度が合っていない。
以上の点が効率を悪くする原因です。
なんとなくゴルフのインパクトに似ていますよね。
ゴルフも全く同様、ヘッドの振幅が同じならリストのコックで作る「タメとリリースポイント」が衝突の力を左右します。
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ゴルフはムチ動作と2重振り子理論で飛距離が大幅にアップ!腕とコックの使い方がこれで解明!
「思い切り振っても全然飛ばないのは何故?」と疑問に感じるゴルフの7七不思議。
今回は読めばその謎が分かる「ゴルフ理論のお話」です。
ゆっくり振ったほうが飛ぶ理由の秘密は、ムチ動作と2重振り子の原理を知れば簡単に理解することができます。
そして「今回のお題であるミート率」が悪いと釘がまっすぐ入っていかないのと同様に、ボールもあらぬ方向へ曲がっていってしまいます。
もちろん、芯を食わないことでせっかくのパワーを1点に集中できなくなり飛距離も出ません。
1リッターのガソリンで走行距離を高めるのと同じ
ミート率は高ければ高いほど良いことがご理解いただけたかと思います。
でもミート率がそのまま飛距離になるわけではありません。
車の燃費のようで、エンジンが5,000ccとデカくてもリッターあたり5kmではもったいないのと一緒で効率の問題です。
一般的にアマチュア男女は1.2~1.3がほとんどです(よくて1.35付近)。
プロゴルファーの多くは1.5に近いといわれますが、実は1.56以上出せる人は(物理的には)いません。
なぜかというとボールの規格というルール上、この数値を超えないように作られているからです。
ミート率が0.1変わると飛距離が7〜8%程度変わると言われ、250ヤードを基準とした場合で20ヤードも変わるから驚きです。
女子プロゴルファーはなぜ飛ばせるのか?
男性アマの方がいっつも感じる疑問です。
「自分の方が早いスイングをしているように見えるんだけどな〜」
とTV中継を見ながら不思議に思いますよね。
女子プロはなぜ飛ばせるのか?
それはヘッドスピードが遅くても、ボールにエネルギーを伝達する技術が優れているからです。
ボールにエネルギーを伝えるためのひとつに、インパクトの瞬間のフェース角度があります。
女子プロは持ち球に対してヘッドの合わせが上手で、無駄な開きと閉じすぎがなく、アマチュア男子同等レベルのヘッドスピードながら、高い初速を出すコツを知っているのです。
ボールの初速は、(ケースバイケースですが)その数字を4倍すると推定飛距離の換算ができます。
例えば初速50m/sなら200ヤードと求めることができます。
同様に、ヘッドスピード40m/sでも初速が50m/sならミート率が1.25で、この飛距離が出せます。
初心者の女性でも、練習でヘッドスピード36m/sで初速が45m/sまで到達すると、ミート率1.25がキープされ、推定飛距離は180ヤードとなります。
まずはこの数値をを目標にしましょう。
ボールとフェースが接触している時間は?
パワーを効率よくボールに伝えるということを、もう少しわかりやすく解説していきます。
まず、完璧なショットは世界のトッププロでも簡単ではありません。
なぜなら、インパクト時のボールとの接触時間があまりにも短く、スイングのタイミングやメンタル面と自然の環境状況を考え合わせると狂う要素があまりにもたくさんあるからです。
ボールがクラブフェースと接している時間は(個人差はありますが)、およそ1/1,800~1/2,200秒です。
カメラの高速シャッターでいっぱいいっぱいですね。
さらに6番アイアンを例にとると、スイートスポットエリアはわずかに30mm前後です。
ボールの直径は42.67mm以上と考えると許容スペースが想像できます。
ボールの重さの上限は1.62オンス(45.93グラム)、クラブ重量は約400g前後ですね。
テイクバックからたった約1.5秒の間に円周5.5mの円弧を描くスイング軌道をヘッドスピード40m/s(時速144km)で振るのです。
この簡単ではない条件下で、6番アイアンなら常に上昇角度35度、5番アイアンなら40度近くの揚力が必要です。
そんな中でライも違い風向きも様々で安定したボールを打つことはやさしくはないのです。
それだけに、ゴルフのスイングは力んでマン振りした時より、リラックスして軽く大きく振ったほうがミリ単位の狂いが少なくなる分ミート率が上がり飛んでいきます。
狂いの幅が大きくなる「負のルーティン」とは
ミート率は高ければ高いほど効率が上がって、無駄の出ないエネルギーの使い方が飛距離につながるという説明をしました。
そしてミート率には、実はもう一つ大事な要素があります。
ミート率は高いだけではなく、良くなったり悪くなったりしない「安定性」が大事なのです。
時折飛びすぎてOBとか、ドッグレッグホールでフェアウェイを突き抜けてワンペナなどを見かけますが、こういう方はミート率が不安定なのかもしれません。
朝のスタートからホールアウトまでドライバーからアプローチ、つまりパター以外で60回ショットすると仮定して、その都度当たったり当たり損ねたりするから時々計算以上に飛んでしまって…ということになりかねません。
そうなると、次のショットから不安になりますますメンタル的にマイナスになり、負のルーティンに陥ります。
バラバラなミート率が作る罠
基本的にドライバーはミート率さえよければ飛距離が出せます。
- ヘッドスピード45m/sでミート率1.15なら207ヤード
- ヘッドスピード40m/sでミート率1.25なら200ヤード
ヘッドスピードが5m/s変わっても、しっかりミートできれば飛距離は大して変わりません。
しかし、2打目以降のフェアウェイウッドとかユーティリティクラブ、もっと言えばアイアンまで、ただ飛ばすだけではなく飛ばさない「縦の精度と横の精度」が求められます。
さらにピンを狙う番手になると、もっとミート率が大事になってきて、グリーンに全く届かなかったり大オーバーでショックを感じたりする羽目になります。
ここでもミート率は高いということと同時に、いつでも安定した数値で打つスキルが必要不可欠になります。
ミート率の知識を高めるのまとめ
町のゴルフショップや、打ちっぱなし練習場では皆さんのミート率を計測することができます。
「自分のショットはどれだけ効率よく飛んでいるのだろう」
「打点はどのクラブでも安定しているだろうか」
を知ることは、スコアアップの大きな手掛かりになります。
また良いミート率を出すことができても、その数値を安定して出すことができなければ逆に「スコアが荒れる原因」にもなってきます。
計測値は良い数字だけを見るのではなく、ミスった時などを冷静に計算して平均値をとり、その格差の安定も考える必要があります。