バンカーって難しいですよね。
それもそのはず、他のクラブは練習場がいくらでもあるのに「砂」のある練習設備はあまりありませんからね。
やはり練習しないとうまく出せません。
一方、まだゴルフに慣れていない方は、バンカーのルールをあまりご存知でないということがあります。
ルールがわからないということがプレーヤーに不安感を抱かせる原因にもなります。
ショットするとき見える範囲にバンカーが点在していると、なんとなく「いやだなぁ」と思うのが苦手の原因になります。
ある程度ルールを知っていれば「入ったら入った時のこと」と割り切れます。
そんなわけで、今回はバンカーで良くある10件の事件簿からルールを覚えていきましょう。
バンカーのルール教室~10件の事件簿
前述のように、”バンカーは食わず嫌い”という側面もあるんですね。
1ラウンドでバンカーに7~8回入れたとしても、10ラウンド程度の経験ではそれほどの練習量をこなしたとはいえません。
やはり場数が必要です。
でも、バンカーショット自体はそれほど難しいものではありません。
フェアウェイにあるボールとは若干異なる打ち方をするだけです。
むしろ深いラフよりやさしい部類だと考えてください。
女子プロの世界でもバンカールールの大きな勘違いがあり事件になったことがあります。
それは2014年中京ブリヂストンの試合中に起こりました。
この事件は、最後の「バンカー事件簿の⑩」で詳しく解説します。
プロでも間違えるほど誤解しやすい「バンカールール」、ここからよくある10のケースをお読みください。
それだけでもうだいぶ違ってきます。
事件=バンカーに入ったボールをよく見るとボールの後ろの砂が盛り上がっています。
打ちにくいので構えるふりをしながら、クラブのリーディングエッジで擦って平らにしました。
回答=重大な違反です。2打罰です。
バンカーの基本的な違反は3項目です。
①バンカーにボールが入ったら、そのバンカー内か近くの同じようなバンカーで砂のテストをすること。
②ボールの入っているバンカーの表面に手やクラブで接触することと、構えた時にソールすること。
③脱出する前に、同じバンカー内にあるルースインペディメントに触れたり動かしたりすること。
事件=同伴プレーヤーが、ボールが飛び込んだバンカーに3本ものウェッジを持って入っていきました。
そして、1本のクラブを持って構える前に、他のクラブを後ろの砂の上に置いたのですが、違反ではないでしょうか?
回答=無罰です。
この場合はソールしたり砂のテストしたとは認められません。
またレーキなども持ち込んで自分の後方に置くことは、むしろプレーファーストのためにも推奨すべきことです。
事件=バンカーから一度で脱出できなくてカッとしたのか、まだボールがバンカー内にある間にクラブで砂を思い切り叩きつけました。
回答=1打罰がつきます。
まだバンカー内にボールがある時は、前問のようにクラブと砂の接触はできません。
2012年に改正になったルールに、「単にコースを保護する目的で、しかも次のストロークに関して違反とならない条件ならば、プレーヤーは何時でもハザード内の砂や土を均すことができる」という規則が出ました。
でもこのケースは全くの例外です。
事件=バンカーはバンカーでもアリソンバンカー(奥側がそそり立つ壁になっているタイプ)の壁面に刺さってしまったようです。
目玉も目玉、大体の位置はわかるのですが見えないのでどこにあるのか?
砂に触れないルールがあって困ってしまいました。
回答=位置の特定のためには砂に触れられます。
このケースは大半がバンカーで起こりますが、ルール的にはバンカー外のスルーザグリーンでも共通しています。
ボールが砂で完全に被われてしまった場合、捜索のためなら無罰で砂を除去することができます。
ルールを知らないでアンプレアブルにしてしまった方もいましたが、もったいないことです。
途中でボールに触れて動かしたとしても無罰で、自分のボールであるという確認が取れたら砂を戻して、できる限り元の状態に復元しなければなりません。
復元したら、ボールの一部を見えるようにしておくことはルールで許されています。
事件=バンカーに入ったボールは困った位置に止まっていました。
深いバンカーでバンカー内壁は土の壁になっていました。
とてもグリーン方向に打つことができないため、仕方なく横に出すことにしました。
クラブを短く持ってバックスイングをしたところ、なんと心配していた土の壁に当たって一部を崩してしまいました。
回答=2打罰です。
壁が崩れてもそのまま振り切って(ストローク)しまえば問題なかったのですが、テイクバックだけとなるとストロークになりません。
テイクバックで壁の砂に触れたかもしくは地肌の土を崩した時も同様に違反になります。
時々見かける、バンカーの壁に枕木など立てる人工的な構造物があります。
これはルール上「コースと不可分な構造物」となり、クラブがいつ触れても違反になりません。(規則13-4・注意事項)
事件=バンカーの淵に置いてあったレーキにボールが寄り掛かっていました。
そっと取り除いたところ、ボールは動き始めバンカーに転がり込みました。
結局、止まったバンカーの位置からショットしましたが・・・
回答=2打罰です。
正しい処置の手順は以下の通りです。
①レーキ(動かせる障害物)を移動した行為と動いたボールは無罰です。
②ボールは止まっていた場所にリプレースします。
③傾斜が強くてボールがリプレースできないときは、一番近くでボールが止まりそうなバンカー外の場所(カップに近づかないで)にプレースできます。
この辺りのルールも知らないと損することになりますね。
もし、リプレースして一度は止まっていたボールが、再度傾斜のために転がって動いた場合はその止まった先からあるがまま無罰でプレーします。
事件=バンカーに行ってみたら、ふたつのボールが並んで入っていました。
最初に打つ人が邪魔になるのではないか、あるいはマーカーが砂とともに飛んでしまうという気遣いから、自分のボールマークは1mくらい離れたところに置きました。
回答=1打罰です。
ペナルティの根拠はマークした位置が離れすぎていたことによります。
確かにすぐ近くにあるとショットの妨げになるかもしれません。
しかしルールでは、ボールをピックアップする場合は正しくマークする(≒5cm以内)ことと決められています。
仮に砂とともにマーカーが飛ばされても、ボール位置の判別はできるという考え方です。
事件=バンカーに入ったボールを、上からよくよくライはどうかなと確認しているうちに、ポケットから距離計測器が落ちてボールが5cmくらい動いてしまいました。
違反になりますか?
回答=1打罰です。
落とした距離計測器はプレーヤー自身の「携行品」です。
「携帯品が球の動く原因となったとき」(規則18-2)には1打のペナルティと明記されています。
そして、動かされたボールは元の場所にリプレースしてプレー続行となります。
事件=バンカー内のボールの後ろに、3cmくらいの大きさの小石がありました。
これを打つと危険もありクラブも傷がつくという判断で、ストローク前につまんで外に捨てました。
回答=2打罰ですが…
ルール上は小石とか小枝はルースインペディメントです。
公式規則では小石も小枝も触れたり動かしたできません。
その行為は違反で2打のペナルティですが、大半のコースにはローカルルール(コース独自の規則)の中で、「バンカー内の小石は動かせる障害物とする」という条項があります。
そのようなことも含め、ルールで損しないためにもスタートする前にスコアカードの裏のローカルルールは読んでおくべきです。
冒頭の女子のトーナメントでの事件の詳細です。
最終日の決勝ラウンドを終えた中村香織プロは競技失格になってしまいました。
その理由が「アンプレヤブルの球」及び「誤所からのプレー」に抵触したためです。
中村プロのボールはバンカーのアゴに突き刺さっていました。
中村はアンプレヤブルを宣言して、ボールのあった位置からピンを結んだ後方線上のバンカー外にドロップしてホールアウトしました。
ルールを知っているギャラリーの多くが、「アンプレヤブルの処置が間違っているのでは?」と競技本部(LPGA)に連絡、中村本人に確認した結果違反が発覚したという経過でした。
バンカー内のアンプレヤブルはバンカー内にドロップという基本の決まりを知らなかったのですね。
ゴルフルール教室・バンカーのまとめ
今回はバンカーのルールを中心に、10のケースを並べました。
もう少し頻度の少ないものまで解説するとこの10倍はあり、いずれも実際のゴルフ場で起こった例でJGAの裁定もあります。
いざその場に臨んでから首をひねっているようでは困りますし、スロープレーの要因にもなってしまいます。
普段から基礎的なことはアタマに入れておくべきです。
前述のように、プロレベルでもルールを理解していないということが時々ニュースになります。
JGAもLPGAも、ルールの講習会を何度も企画しています。
欧州のプロたちはレベルが高く、トーナメントの最中に事あるごとに競技委員を呼ぶ選手は「講習会に出るように」という召喚状が届くそうです。
そのため彼らは勉強して、自分たちのプレー中の処置は自分たちで解決するという習慣がついています。
アマチュアでもプロでも「ゴルフは自分がジャッジする」という原点に立ち返ってみれば、しっかりとルールを学び正確な処置をしておきたいものです。
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