ゴルフルールには「何打の罰」とか「○打ペナルティ」の言葉が出てきます。
だからといって、ルールは罰を与えるためだけにあるというのは必ずしも正しい理解ではありません。
ゴルフのルールは「あるがままに打つ」というたった一つの原点から始まります。
”あるがままに”といってもそのまま打てないという状況になったとき、その救済処置を教えてくれる水先案内人が必要ですね。
ということでゴルフルールの多くは「救済目的」なのです。
自分のスコアはプレーヤー本人しか決められませんから、どんな時にどんな救済があるかを知らないと正しい処置ができません。
今回もわかりやすいゴルフルール教室・ウォーターハザード編の解説を行います。
ウォーターハザードのルール教室~ゴルフ用語
それではウォーターハザードで待ち受ける「これってどうすればいいんだろう?」という10のケースを紹介する前に、まずはウォーターハザードに関するゴルフ用語のチェックしておきましょう。
①CP点
ハザードラインを最後に横切った地点のことをいいます。
CP点を起点としてこの後出てくるウォーターハザードとラテラル・ウォーターハザードでの対処方法が変わってきます。
②ウォーターハザード
ウォーターハザードは池や小川などの水がある場所とその周辺のエリアを示し、黄色い杭(黄色い線)で区切られた場所のことを言います。
ウォーターハザード内に入ってしまった時は、1打罰を受けて
①打ち直し
②CP点とピンを結んだ後方線上
の救済を受けるか、「あるがままに打つ」の選択となります。
③ラテラル・ウォーターハザード
ラテラル・ウォーターハザードは赤い杭(赤い線)で示されています。
ウォーターハザードとの違いは、上記救済措置のほかに「CP点から2クラブレングス以内(ホールに近づかない)にドロップできる」というルールが付与されます。
④ルースインペディメント
ルースインペディメントとは「自然の障害物」を意味し、コース上にある小石や落ち葉・虫などがそれに当たります。
コース内で(ボールが動かないように)取り除くのは無罰だが、ハザード内では1打罰となるので注意。
ウォーターハザードのルール教室~10件の事件簿
ゴルフは「同じコースをラウンドして、他のプレーヤーよりいかに少ないスコアでホールアウトできるか」を競い合うスポーツです。
ゴルフで競うスコアは「打数+ペナルティ」の合計で、ペナルティは「罰と救済」の合計です。
救済はひとつの条件ではなく、複数から選ぶときもあります。
そんなわけで、ルールを知らないと無駄なスコアを加算してしまいます。
さて、今回は「池」に絡むルール、初心者の方がよくやってしまいそうなシーンから取材しました。
裁定の例はJGA(日本ゴルフ協会)からですが、ルールは時々改正されるのでその都度ご確認ください。
事件=ウォーターハザードの境界を示す杭が黄色でした。
杭の色は赤い色と二種類あることはわかっていましたが熟知していなかったので、黄色のハザードラインを横切った地点から大体3mくらいのところから打ちました。
回答=違反です。2打罰で元に戻る。
ウォーターハザードでは
①打ち直しに戻る(ストローク・アンド・ディスタンスのルール)
②CP点とピンを結んで後方線上(距離無制限)に戻る、このふたつは常にあります。
②のラテラル・ウォーターハザードはオマケがひとつあります。
CP点からホールに近づかないで2クラブレングス以内にドロップします。
例に出た事件では黄色なのに赤の処置をした上に、3mという距離は違反で誤所からのプレーで2打罰ですが、いち早く戻って正しい処置をしないと競技では失格になります。
事件=ボールはウォーターハザードを示す赤い杭と赤い杭の中間にありました。
杭は両方とも大きく傾いていて、いったいボールはウォーターハザードの中か外か判別できません。
回答=地面側(杭の根元)に糸を張る感覚で見る。
ウォーターハザードの杭は色はなんでも同様に、杭の地面に接している場所のスルーザグリーン側(フェアウエイ方向)に境界があります。
この点はOB杭と同じで、杭のテッペンではありません。
ただし、OBは少しでも上記の境界線に接しているとセーフ、ウォーターハザードは少しでも接しているとウォーターハザード内というふうに記憶したらわかりやすいでしょう。
事件=ボールが行った先はなんと赤い杭にピタッとくっついた場所でした。
ルール上ウォーターハザード内とは知っていましたが、杭を抜いてもボールが動かなかったのでそのまま打ちました。
回答=無罰です。
OB杭は固定物扱いなので抜ける状態にあっても抜いてはいけませんが、ウォーターハザードの境界を示す赤や黄色の杭は「動かせる障害物」です。
ボールが動かないことを条件に引き抜き、打った後は元に戻せば問題ありません。
ただし、ウォーターハザード内ということは、打つときにソールできないというルールは遵守します。
事件=ボールは赤い杭の区域内に入ってしまいました。
ガッカリしつつ現場に行ってみるとなんと乾季のため水がありません。
ラッキー!といいながら区域内に入り込んでボールを打ってしまいましたが良かったのでしょうか?
回答=問題なく無罰。
ウォーターハザード内は、絶対に打ってはいけない区域ではありません。
先ほども登場しましたが「ゴルフはあるがままにプレーする」のが基本です。
基本通りなら間違いはありません。
なので、水があっても深くても浅くても、プレーヤーに打つ意思があれば水の中であってもボールは打てます。
この次以降に出てくる、いくつかの注意点さえクリアしていれば全く問題ありません。
事件=やはり水がないウォーターハザードにボールは入りました。
ボールが見えていて簡単に打てると判断して区域内に入り、ボールを覆っていた落ち葉や小石を片づけてショットしましたが…?
回答=2打罰です。
水があってもなくても打てるかどうかの判断は自分で行って問題ありません。
そのままプレーを続行するために守らなければいけないことがいくつかあります。
- ソールをしてはいけない(通常のショットのようにクラブを地面に付けること)。
- ボールの周辺の落ち葉や小枝など(ルースインペディメント)には一切触れられない。ただし、ボールと離れている場所では触れても問題なし。
- スタンスしてから、その動作の影響でボールが動くと2打罰。
例えば、水の中に入ること自体は問題ないのですが、足などで波を起こしその波動が伝わってボールが動くと2打罰です。
事件=赤い杭があって、すぐ近くにボールが止まっています。
近づいてみるとこの杭だけは鉄製で、深く打ち込んであって抜くことができません。
仕方がないのでパターで横へ打ちました。
回答=無罰でしたね、もったいない。
やはり、ゴルフのルールを少しでも知らないと損をするという見本でしたね。
このケースは「動かせない障害物の扱い」がとれたのです。
このケースでは、簡単に抜けない時の処置で救済を受けて無罰でドロップ可能でした。
事件=ウォーター・ハザード内でしたが、ボールを打てるという判断でプレーした結果、そのボールは10ヤードほど前に飛びましたが、やはりウォーターハザードから脱出できませんでした。
回答=チャレンジは良かったのですが、残念な結果でまたハザードに留まったケースですね。
次打の手段はふたつあります。
①あるがままに打つ。
②通常の救済ルールと同じで、純粋に打った打数に1打付加しCP点からの処置を行います。
ウォーターハザードからのボールがOBになった時は、同じように再ショットもできますが、救済の1打+OBの1打の2打罰でCP点に戻るという方法もあり選択できます。
事件=池越えのショットにチャレンジしました。
ボールは一度は池を越えましたが、斜面だったので弾んでから戻ってしまい池に入ってしまいました。
そこには赤い杭が立っていますが、この後の処置はどうしたらいいのでしょうか?
回答=現場のラテラル・ウォーターハザードのライン次第。
つまり、越えたというだけでは判断できず、そこのウォーターハザードの境界線がどこかということになります。
落下地点には赤い杭か赤いラインが引いてあるはずです。
ボールの落下地点がその境界線を少しでもオーバーしていたら、そこにCP点があります。
落ちたところがすでにハザード内ならもっと手前の境界にCP点があります。
いずれもCP点から1打罰でグリーンに近づかない2クラブレングスにドロップできます。
黄色い杭だった場合は迷うことなく後方線上にバックしてドロップします。
事件=打ったボールはコロコロと転がり、なんとプレーヤーが渡るための橋の上に止まってしまいました。
幅があって十分スイングできるので、板を気にしつつそのまま打ってしまいましたが?
回答=無罰です。
昔のルールでは橋は動かせない障害物でした。
しかし現代では「ハザードの境界は上にも下にも垂直に伸びている」という定義に変わっています。
水に接していなくても杭の範囲内は「池」だという判断です。
①ウォーターハザードの救済を受けて、CP点から1打罰でドロップする。
②あるがままに打つ。
どちらかが選択できるので処置に間違いはありませんでした。
特記事項としては知ってお得な情報が二つあります。
①橋に限り、ハザード内でもソールできる。
②近くにあるルースインペディメントに触ることはできない。
手やクラブで触れると2打のペナルティになります。
事件=ウォーターハザード内のボールは水際だったのでそのまま打ちました。
上手く出せてボールの近くに行ってみてビックリ!
そのボールは自分のボールではなく他人のボールでした…
回答=ハザード内誤球で2打罰です。
昔はハザード内の誤球は許されていて、打っても無罰でした。
2008年のルール改正で逆転、今はスルーザグリーンで行われるミスと同じ2打罰になります。
この改正ルールでの注意点は以下の通りです。
①(もし水がなければ)以前のルールでは触れられなかった自分のボールかどうか確認できるようになりました。
その方法は指でそっと持ち上げ、泥や付着物を落としてはいけないこと。
②(水がないとき)ボールを元あった状態に忠実に再現するということです。
ゴルフルール教室・ウォーターハザード編のまとめ
ウォーターハザードにボールが入った時ほど、そのプレーヤーのマナーレベルとルールの習熟度がバレバレになる場所もほかにありません。
特にルールは知っていればそれほど難しいものではないことが、お読みになってお分かりかと思います。
ゴルフのハザードは「救済措置」という観点から誕生したものなので、ルールを知らないとスコアの点ですごく不利になります。
しっかり学んで更なるスコアアップを目指していきましょう。
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