打ち下ろしの320ヤード。
「う〜ん、届いちゃうかもしれないからボクは一番後にショットするよ」
そんな会話、いつかはしたいものです。
あるいは500ヤードもある長いパー5だけど打ち下ろしでしかもフォローの風、ビッグドライブをかまして2打目はアイアンで2オン!
なんて経験をしてみたいですね。
250ヤードは通常の男性の身体能力であれば見えてくる数字ですが、これが300ヤードになってくると様々な条件をクリアしないと達成は難しいです。
-
ドライバーで250ヤード以上飛ばしたい!「飛距離アップのコツとテクニック」
ドライバーは飛ばすための道具です。 ドライバーで少しでも飛ばしたいと考えるゴルファーはごく自然です。 アメリカのツアー82勝という、いまだ破られない記録を持っているサム・スニードはこういいまし ...
でも意外かもしれませんが、ゴルフを始めたばかりの方でも300ヤードのビッグドライブを打てるポテンシャルを持っている人は沢山います。
今回は誰もが夢見る飛距離「300ヤード」を飛ばすための条件とテクニックについて触れてみたいと思います。
300ヤード以上飛ばすプロゴルファーのスタッツ
2017年9月25日現在のPGAのドライビングディスタンス(AVG)を見てみましょう。
そうすればスタッツを分析すれば数値的にどの程度のものが必要かがわかります。
トップはローリー・マキロイの317.2ヤードです。平均ですからね、いかにものすごい飛距離かがわかります。
しかも彼はPGAツアー選手の中ではかなり小柄で身長は175cmです。
以下、2位=ダスティン・ジョンソン(315)、3位=ブレンドン・ヘイギー(312.7)から42位タイのリッキー・ファウラーとビリー・ホーシェルの300.1ヤードと並んでいます。
気になる日本選手の松山英樹プロは飛距離部門26位、平均が303.4ヤードとなっています。
思えば2000~2002年にかけて平均飛距離300オーバーを記録したのが、ジョン・デイリーほぼひとりでした。
ところが2003年にはいきなり9名が300ヤード越え、この頃から460ccの大型ヘッドが活躍し始め、ギアとボールの進化が顕著になったことがよくわかります。
300ヤードを飛ばすための条件とは?
まずは数値的なアプローチからスタートします。
以下の数値をクリアすることが300ヤードを飛ばすための条件となります。
ヘッドスピードは53m/s以上欲しい
飛距離の方程式は
(ボール初速÷ヘッドスピード)×ヘッドスピード×4
でおおよその推定をすることができます。
ボール初速が75m/s、ヘッドスピードが50m/sであれば
(75÷50)×50×4=300ヤード
となります。
()で括られた部分は言い換えると「ミート率」となりますが、理論上の限界値は1.5とされますので、現実的には
(75÷53)×53×4=300ヤード(ミート率:1.42)
あたりが妥当ではないでしょうか。
スピン量は2,300rpm以下が条件
PGAの飛ばし屋すべてではないですが、多くの選手のティーが比較的高めなことに気づきました。
アッパーブローで少しでもオーバースピン(バックスピンを抑える)を掛けようという意図が見られます。
スターダムにのし上がってきたジャスティン・トーマスは、PGAの飛距離部門でも常にトップクラスです。
彼のヘッドスピードは52~53m/sですが、とにかくスピン量が少ないので軽々300ヤード飛んでいきます。
飛ばすための第一条件であるヘッドスピードがいかに速くても、スピン量が多いとボールは飛んでくれません。
ヘッドスピードが速くてもスピン量が多いとボールは吹き上がるほうにばかりパワーをとられてしまい、水平方向のエネルギー(推進力)を吸い取られる格好になります。
300ヤードという飛距離なら、2,300rpm(一分あたりの回転数)以下でないと難しくなります。
300ヤードを飛ばすためのスイングテクニック
ここまでで若干「ムリなんじゃないか」と思われ方もいらっしゃるかもしれません。
確かに厳しい条件ですが、なんの根拠もなしに飛ばそうと思っても飛んでくれないのがゴルフの難しいところです。
まずはしっかりと現状把握をして、そこから少しずつ理想に近づけていきましょう。
先ほどは300ヤードを飛ばすための条件を数値化して解説していきましたが、ここからは大きな目標をクリアするためのスイングテクニックについて紹介をしていきます。
クラブの長さと重さはポイントの一つ
まずはクラブ選びについてです。
ヘッドスピードを上げるには、とにかく遠心力をうまく使う必要があります。
そのためには「スイングアークを大きくする」必要がありますが、そこで出てくるのが「長尺ドライバー」です。
ルール的には48インチ(121.92cm)が限度です。
基礎体力がないとしっかりと振り抜くことは難しいですが、理論的には長ければ長いほど有利です。
続いて重さについてですが、意外なことに飛ばし屋たちはあまり重いクラブを使いません。
ヘッドスピードを上げるためには軽いほうが圧倒的に有利で、重いのは振り遅れるという理由で敬遠しています。
市販の長尺にはPRGRの”egg1”というドライバーがありますが、ヘッド重量はたった190gです。
通常のアスリート向けドライバーは200gが平均なのでかなり軽いほうです。
それに伴ってシャフトもヘッドスピードと強い相関関係があります。
自分が通常で使うシャフト重量の20%程度少ないもののほうが飛ばせます。
左右非対称の大きなアークとタメがないと300ヤードはムリ
続いてスイングアークについてです。
「左右対称のスイングが理想」とよく言われますが、飛ばすという観点から考えるとこれは間違いです。
*ここでいう左右はインパクト前とインパクト後のことです
理由としては二つあり、まず一つめは「ボールスピン量のコントロール」です。
前述したように飛ばしの条件として2,300rpm以下を目指すことが必要ですが、そのためにはボールを押し出すことが不可欠です。
インパクトを頂点とした左右対称のスイングアークではボールに余計なスピン量を与えることになり、またボールを潰す(反発係数を上げる)ことができなくなってしまいます。
二つめは「ヘッドスピードの加速のため」です。
スイングを正面から見て左半分(トップからインパクトまで)は「タメ」ができるほどレイトヒット(ヘッドが後からついてくる)スイングにすることでムチ動作の理論でヘッドスピードが上がります。
ダウンスイングではヘッドは比較的体の近くを通り、右半分(インパクト後)は限りなく大きくという、多少左右対称が崩れている選手が多くいます。
ドローボールでランを稼ぐ
ゴルフはボールとヘッドの衝突した瞬間、つまりインパクトがどうなっているのかが全てです。
ヘッドスピードがいかに速くても、ヘッドの芯とボールの芯は接触した瞬間4~5cmもの距離があります。
このことを単純に縦横2方向のイメージにしたのが図です。
ここで生じた「ズレ」がボールに力を伝えるときのロスになります。
ミート率は芯でとらえることで上がってきますが、仮にミート率が1.45と1.25の方を比較してみると
- 1.45×53×4=307ヤード
- 1.25×53×4=365ヤード
と、40ヤード以上も推定飛距離が変わってしまうことがわかります。
ただし最近のドライバーは、フェースの芯を外してもほんの少し上とか少しトゥ寄りのほうが飛ぶということもコツです。
特にトゥ寄りでのヒットはドローボールになりやすく、着弾地点からのランを期待することができます。
-
ドローボールで飛距離アップ!初心者でも簡単に打てる7つのコツとは?
打ち出しはプッシュアウトしてしまったように見えたのに、その後グングンとフェアウェイに戻ってきて、着地後も20~30ヤード転がっていくドローボール。 ゴルファーを始めたての方でもいつかは綺麗なドロー ...
ティーを高くするのも捕まえるための工夫
飛ばすボールは擦ったらダメで、やはりしっかり摑まえないと300ヤードは無理です。
先ほどもティーの高さとスピン量の話が出ましたね。
ドライバーをダウンブローに振ってしまうとスピン量が増えて距離の点ではソンになります。
アッパーブローに振ってオーバースピン・イメージを出す必要があります。
そのため先ほど説明したように、ティを高くしたほうが有利だという意味です。
-
ティアップの高さでドライバーショットが劇的に変わる!適正な高さと自分に合ったティペグの見つけ方
あなたはティアップの時、何を基準にその高さを決めていますか?
ティの高さは使用するクラブとスイングの癖によって決まってきます。また基本の高さが出来上がれば、そこからのアレンジで様々な種類のボールを打ち分けられるようになります。
アッパーブローで捉えるためには「ビハインド・ザ・ボール」、つまりボールよりも頭が飛球線の反対方向にある必要があります。
頭は常にボールよりも後ろにあるようにしましょう。
右肘がまっすぐだとパワーが伝達しきれない
先ほど「左右対象スイングは飛距離が出ない」というお話をしましたが、これは腕の振りに関しても同じことが言えます。
アドレスを取った時は両腕が真っ直ぐ(肘が曲がっていない)になっていると思いますが、インパクト時に右肘が真っ直ぐになってしまうと効率的にボールへ力を伝えることができません。
上記はローリー・マキロイのドライバーショットのインパクトとフォロースルーですが、右肘が曲がった状態でボールをヒットし、その後腕が真直ぐに伸びています。
「え?そうなの?」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、これは至極簡単なことです。
例えば座った状態で、手の平でテーブルを押してみてください。
この時肘を真っ直ぐにした状態と曲げた状態の2通りで試してみると、後者の方が圧倒的に力が入っていることがわかります。
300ヤード飛ばす条件とコツのまとめ
ほかにもいろいろありますが、300ヤードとなるとここに書かれた条件とコツをマスターすることが第一歩になります。
これまでの話をまとめると、
・ミート率1.4以上 (初速74m/s以上)
・スピン量2,300rpm以下
・真芯かややトゥ寄りでヒット
・アッパブローで打つ
・ビハインド・ザ・ボールを心がける
・右肘はやや曲げる(右利きの場合)
となります。
基礎的な体力強化はもちろんですが、ボールやクラブ選びにも注意を払ってください。
途中で登場したジャスティン・トーマスのヘッドスピードは、ご紹介したように52~54m/sと石川遼プロとほとんど同じです。
でもふたりは平均飛距離が20ヤード近く違います。
その秘密は今回解説した内容でご理解いただけたのではないでしょうか。